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森林の活用が日本経済の抵抗力を高める

新書大賞を受賞した「里山資本主義」の藻谷浩介氏に聞く

2014年4月25日(金)

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 販売部数が50万部を突破したという「デフレの正体」に続き、昨年7月に出版した「里山資本主義」が今春、「新書大賞2014」を受賞した。

 著者でエコノミストの藻谷浩介氏は、金融緩和で一発大逆転を狙ったアベノミクスは空振り、そもそも日本経済は、成長はしていないが別段衰退もしていないと断言する。慌てず騒がず地道な努力、たとえば日本国土の7割を占める森林、いわば「太陽エネルギーの蓄積装置」を活用し、林業を花咲かせることが、原油やLNGの購入による国富流出を減らすと、あるいは耕作放棄地を使った地産地消の促進が、地方経済を自立させることにつながると、ひいては東京の一極集中に伴う様々なリスクをヘッジすることにつながると説く。

 オーストリアや日本国内の先進的な森林の活用、耕作放棄地の活用を紹介しながら、莫大な借金を抱え、世界最速の高齢化社会に突入した日本が生き残っていくための現実的な方向性を提示した「里山資本主義」に込めた思いを聞いた。

(聞き手は石黒 千賀子)

「里山資本主義」の「新書大賞」受賞おめでとうございます。今回、本の中で「日本人は今享受している経済的な繁栄に執着しつつ、いつそれを失うかと不安にさいなまれている。これが日本人の多くが抱く不満や不信の大元にある」と指摘されたところが、ガツンと来ました。確かにそこが最大の問題かもしれません…。

藻谷:今回の本で私が鎮めたかったのは、数字も確認せずに勝手に絶望し、不満や不信でつながって、世の中をおかしくする方向にどんどん走っていく日本人の「焦り」です。

 そもそも日本の輸出は震災の頃を含めてここ数年間、リーマンショック前のバブルだった3年間を除けば史上最高の水準で、バブル時の1.5倍以上もあるのです。中国+香港に対しても、韓国に対しても、台湾、シンガポール、タイに対しても、日本の国際収支は黒字です。そういう数字を一切無視し、日本はもうおしまいだと騒ぐ「日本ダメダメ論」に対して、この本の中では具体的な数字を挙げて徹底的に反証しています。

 しかしながら世の大勢は、「日本はアジア諸国に負けている、だから中韓に毅然たる態度を取る安倍首相の下で、ヤケクソのダメモトで金融緩和に賭けてみよう」なんて方向にどんどん流れている。「その根拠は何ですか?」と聞けば「皆がそう言っているから」。数字を挙げて「日本経済はアジアに負けてませんよ」と説明すると「ユニークなご意見ですね」。まるで北朝鮮にでも行ったような感じで、公式の統計数字に基づいた普通の議論がまったく通じない。

日本のGDPは横ばいで立派 1人当たりは増えている

 大絶賛の下に実施されているアベノミクスの「異次元の金融緩和」ですが、効果は株が少々上がった程度で、小売り販売額も就業者数もほとんど増えず、輸入品の価格上昇で国際収支は大赤字になってしまった。ちなみにまったく事前に予想された通りの結果です。

藻谷 浩介(もたに・こうすけ)
1964年山口県生まれ。88年東京大学法学部卒、同年日本開発銀行(現・(株)日本政策投資銀行)入行。米コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経て、2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究、著作、講演を行う。
 平成合併前の約3200市町村のすべて、海外59カ国を概ね私費で訪問した経験をもつ。その現場での実見と、人口などの各種統計数字や郷土史を照合して、各地域の特性を多面的かつ深く把握していることで知られる。2012年より(株)日本総合研究所調査部主席研究員。
 著書に、人口動態の社会への影響を伝えた著書「デフレの正体」のほか「実測! 日本の地域力」、 近著に「しなやかな日本列島のつくりかた」がある。(写真:村田和聡、以下同じ)

 しかるに、これがダメならもう他に道はないと思い込んで、効果絶大と信じたふりをしている人も沢山いる。まるで太平洋戦争の時と同じです。「アジアを侵略するしかない」「日米決戦しかない」と、勝手にみんなが互いに洗脳しあったわけですが、妄想に過ぎなかった。日本はまったく別の選択肢で戦後の大発展を遂げました。今の日本に関しても、そもそも日本経済は首相およびその賛同者が信じているように死にかけているわけではまったくなく、かといってアベノミクスで大成長を遂げることもなく、坦々と「無事これ名馬」で進んで行っているのです。

 日本が2%の経済成長率を達成できるかできないかと大騒ぎしていますが、GDP(国内総生産)が横ばいを維持できればすごいことです――。

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「森林の活用が日本経済の抵抗力を高める」の著者

石黒 千賀子

石黒 千賀子(いしぐろ・ちかこ)

日経ビジネス編集委員

日経BPに入社後、英LSEに留学し修士取得。日経ビジネス、日経ナショナルジオグラフィック、日経ベンチャーを経て、2003年日経ビジネスに編集委員として戻る。主に、本誌の「世界鳥瞰」の欄を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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