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「夢を叶えるなら、その10倍は苦労しないと」

高台寺和久傳 桑村祐子氏(その2)

2014年6月30日(月)

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桑村 祐子(くわむら・ゆうこ)「高台寺和久傳」女将/代表取締役
1964年京都府生まれ。87年、ノートルダム女子大学英語英文学科卒業。大徳寺の塔頭で住み込み修行を経た後、89年に家業の「高台寺和久傳」に入る。2号店の「室町和久傳」の立ち上げを担当し、軌道に乗せる。2003年、創業者の母、桑村綾が設立した物販の別会社「紫野和久傳」の取締役に就任。2010年、母の後を継いで、「高台寺和久傳」代表取締役に就任。(写真:樋口とし、以下同)

―― 昨晩、夜に「高台寺和久傳」の様子を拝見しました。打ち水がされた玄関と、磨きぬかれた廊下。お庭を眺めながら座敷に通されると、ほんのりとした照明の中に、障子や畳の美しさが浮かび上がって、まさしく谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の世界。昭和の名工による数寄屋の空間を堪能しました。

桑村:料亭というものは、建物だけでなく、掛け軸ひとつを取っても、先人が重ねた努力の上に培われた、時代と文化の集積なんですね。お料理にしても、若い時からコツコツと研鑽を積んだ人たちが、長年にわたって伝え続けてきたものです。料亭の空間はすべてがあつらえたもので、出来合いのもの、よそからちょっと買ってきたもの、というものがないんですね。

―― そして今、一晩明けた朝の「高台寺和久傳」にうかがっております。真っ先に目に入ったのは、従業員のみなさんが一所懸命にお掃除をしている姿。日本家屋だからでしょうか、風の通りもよく、朝の時間は清々しい気に満ちています。

桑村:この建物がもともと持っている力というものがあって、それを最大限に生かすには、やっぱりお掃除が大切なんです。庭の木は葉っぱの一枚一枚を拭きますし、苔の間にあるゴミの一つひとつも、ピンセットでつまんで取ります。お座敷も廊下も掃き清めて、埃ひとつ落ちていないよう努めます。

―― お座布団の飾りの房も揃っている。

桑村:そうなんです。私はその房の角度が乱れているのも嫌いで(笑)。

―― その空間の中ですごく緊張するかと思いきや、夜も朝も、とても心地よくなごむことができます。というのは、お給仕の方がみな、温かい笑顔で接してくださるので。

「温かきは万能なり」

桑村:そう言っていただけるとうれしいです。建物の緊張感と、それをほぐす温かみと、洗練されたところと、野趣をとり入れたところとのバランスが大事、といつも思っています。すべてが調和して、やすらげる空間を作りたいと思っています。

 たかが料理屋、されど料理屋、と言いましょうか、私たちはお給仕に徹する立場です。だからこそわきまえて、卑下するのではなく、誇りを持って仕事をすることを大切にしています。あるお客さまにいただいた言葉ですが、「温かきは万能なり」という言葉が、私の指針にもなっています。ものごとを突き詰めても、そこに温かみがなければ、無きに等しいと思うからです。

―― じーんと来たところで、前回の続きのお話をうかがっていきたいのですが、禅寺での住み込み修行の後、家業に入られた桑村さんが、最初に手がけたのは、「室町和久傳」という2号店のプロジェクトでした。

桑村:室町通りにあるビルの地下に2号店を出しましょう、という話になったのはいいのですが、そのころの室町は織物の問屋さんが並ぶだけで、夜は犬一匹も歩いていないようなビル街でした。でも私は、だからこそやる意味がある、と思ったんです。

 とはいえ、それまでは学校の中とお寺の裏方しか知らない、まったくの世間知らず。負けん気は強くても、商売のイロハも分からないものですから、そういう立地は集客に苦労する、という基本的なことも後で気付いて落ち込むという始末でした。

―― 「室町和久傳」は、「高台寺和久傳」とはまた違って、京町家を改装した、料亭よりも入りやすい業態です。

桑村:現在の店は、2006年に堺町の町家に移転し、茶寮も物販も併設したものですが、室町にあった当初は席数25の小ぶりな店でした。その時から、高台寺の店のよさは残しながら、それまでの和久傳になかった店を作らねばと、必死にもがいていました。

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「「夢を叶えるなら、その10倍は苦労しないと」」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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