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京大生が東京で売る伝統京野菜

「新しい農業の要になれるのは卸だと思います」

2014年5月23日(金)

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和食の伝統を支えてきたにもかかわらず絶滅の危機に瀕する日本の伝統野菜。それを育てる農家と、入手したい料理人をつなぐベンチャー卸を京都大学の学生が起業して1年経った。扱い対象も京野菜から江戸・東京野菜へ、いずれは各地の伝統野菜のブランド化・普及支援へと目標を広げる。(聞き手は秋山知子)

京都大学の現役学生ばかりで立ち上げた京野菜卸の会社だそうですね。設立のきっかけはどんなことですか。

前木 秀光(まえき・ひでみつ)氏
株式会社キシュウ代表。1991年生まれ。2011年、京都大学総合人間学部入学。2013年4月、京野菜の卸売とイベント企画、野菜の保存技術の研究開発を手がける株式会社キシュウを設立。

前木:もともとは同じ学生寮にいた仲間が設立のメンバーです。農業おたくというか、農業を愛する農学部の人間が何人かいて、彼らと一緒に農業にかかわる問題を議論していたのが出発点です。「世の中ではこう言われているけど、実際のところはやってみないと分からない」という思いから、現実に会社を作ることに至りました。

野菜を作るとか研究するというスタンスではなく、卸に着目したのはなぜでしょうか。

前木:世の中で確実に需要があるのに、欲しい人の手にうまく届いていない野菜があるという問題に気づいたことです。例えば伝統野菜と言われるものです。もともと僕の父が東京で野菜の卸をしており、学校や官公庁と取引があったという背景もありました。卸は農家と飲食店の間にあって、様々なプロデュースができる可能性のある存在だとも考えました。

 日本の農業の問題はいろいろあると思うんですが、端的には「夢がない」ことだと思います。小学生に将来の夢を聞くと、「プロ野球選手」とかはよく出てきますが、「農業」はまず出てきません。それは「かっこいい農業の姿」を見ていないからですよね。何か新しいことに挑戦しているとか、開拓とか、何かを発信しているというイメージが一般的に農業にはないと思います。

 ただ、実際にはそんなことはなくて、ブランド価値を生み出せる農業は確実にあります。例えば京野菜です。

京都の伝統野菜というと壬生菜とか賀茂茄子、京水菜などですね。最近は首都圏でもデパートや大手スーパーで京野菜を扱うところが増えています。やはり少々高くても売れるようですね。

前木:京野菜がなぜブランド価値を生むのかについては、僕たちの間でも分析しました。「京野菜はおいしいか?」と聞かれると、それは普通においしいと思います。ただ、いわゆる野菜本来のおいしさとはちょっと違うような気がするんです。それはなぜなのかを議論したんですが、京都には京懐石という高級料理があり、京野菜はそれに必要不可欠なもの。料理人が培った歴史があるからこそ、京野菜はおいしいんだという結論に至りました。

単に新鮮だとか栄養価が高いとか、安全とかだけではない文化的価値がブランドになっていると。

前木:だから、そういう野菜を売っていくには料理人の方々と連携することが不可欠だと考えました。

 もともと卸は、市場で商品を仕入れて、取引先に納める。それ以上のことをあまりやってこなかったと思うんです。もちろん物流機能はすごく大事なんですが。

 昨年、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されました。例えば2020年の東京オリンピックに向けて和食をもっと世界的に売り出したいとします。そういう時に、卸は情報発信の要になれる存在だと思います。現在当社は、東京都内の小学校1校に京野菜を卸しています。京野菜は和食素材の原点なので和食の普及にも貢献できますし、小学生の時からそういうものを見せていけば農業に対するイメージも変わっていくでしょう。

京都大学構内のイタリアンレストランにも京野菜を卸している。パスタに乗っている「京ラフラン」は、京都大学と京都市が共同開発した「新京野菜」

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「京大生が東京で売る伝統京野菜」の著者

秋山 知子

秋山 知子(あきやま・ともこ)

日経ビジネス副編集長

1986年日経BP社入社。日経コンピュータ、日経情報ストラテジー、日経アドバンテージ、リアルシンプル・ジャパンの編集を担当。2006年から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト