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ベビー服店で輝く「リストラ技術者」

インタビュー(4)大村禎史・西松屋チェーン社長

2014年6月12日(木)

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 “会社の消滅”によって心ならずも職場を去った9万人余りの三洋電機の元社員たち。だが、人生万事塞翁が馬。大きな挫折を味わった彼らに、手を差し伸べる人々がいた。「同情」や「救済」ではない。名門家電メーカーの現場を支えてきた実力を高く評価し、「力を貸してほしい」という会社が数多くあったのだ。

 その中の1つが西松屋チェーン。兵庫県姫路市に本社を置き、全国に850店舗を展開するベビー服チェーンだ。西松屋は元三洋電機の社員を8人採用した。パナソニック、ソニー、ルネサスエレクトロニクスなどを含め、電機大手の元技術者が62人も働いている。ベビー服チェーンと電機大手のリストラ社員。一見、不思議な取り合わせだが、そこには冷徹な経営判断があった。西松屋チェーンの大村禎史社長がその秘密を明かした。

ベビー服チェーンと電機メーカーのリストラ社員。なかなか結び付かないのですが、62人も採用された理由を教えてください。

大村禎史氏(以下、大村):話は10年ほど前に遡ります。渥美俊一先生という米国チェーンストア研究の第一人者をご存知ですか。(ダイエー創業者の)中内㓛さん、(イトーヨーカ堂創業者の)伊藤雅俊さん、(ジャスコ創業者の)岡田卓也さんと同世代で、日本で最初にチェーンストアの理論を体系化した人です。私もその方の指導を受けていました。なかなかエキセントリックな方だったので、実際のところは逃げ回っていたのですが、ある日、セミナーの後につかまりましてね。「君のところも本格的にプライベートブランド(PB)をやるんだったら、生産技術に詳しい技術者に来てもらわないとダメだな」と言われたのです。

大村禎史氏

 ちょうどその頃、店舗数が500を超えたあたりで既存店の売り上げが伸びなくなり、出店しても利益が増えない状況になっていました。ベビー服やベビー用品は、どこも仕入先が同じで似たような商品を扱っていましたから、違いを出すのが難しい。そこでPBをやり始めたところだったんです。「服を作るわけですから、アパレルメーカーさんあたりから来てもらえばいいですか」と質問すると、先生は「アパレルの技術者は、服作りは自分が一番よく知っているというドグマがあるからダメだ」とおっしゃる。「では、どこから来てもらえばいいですか」と聞くと、「電機メーカーがいい」と言われました。

 しかし、10年前というのは、「亀山モデル」で大成功したシャープさんが堺市に液晶の大工場を建て、パナソニックさんも姫路に巨大な「パネルベイ」を作っていた時期ですよ。私も(シャープの)町田(勝彦)会長の講演を聞きに行き、感銘を受けたばかりでした。そんな業界からどうやって人を取るのか。さっぱりわかりませんでしたから、先生の話を聞き流してしまったのです。

しかし、2004年ごろから三洋電機の業績が怪しくなってきました。

大村:そうなんです。三洋電機さんで第一次のリストラが始まりました。三洋さんの事業拠点は姫路からも近いですから、ひょっとしたら採用できるんじゃないかと。渥美先生の話を思い出したんです。それで確か2008年の年末だったと思いますが、浜田(昇二、西松屋チェーン商品本部ベビーカー開発マーチャンダイザー)さんが面接に来たんです。厳密に言うと、浜田さんは三洋電機から日立製作所グループに売却された会社の社員でした。電子部品を基板に実装する機械(チップマウンター)の開発をやっていたそうです。

「PBを甘く見ていた」

面接の結果、その浜田さんを採用されるわけですが、電機メーカーの技術者だった浜田さんに社長は何を求めたのですか。

大村:本格的にPBを始めた時、商社を介してベビー服や育児雑貨を中国企業に生産委託したんですが、納期の遅れ、品質問題、欠品と様々な問題が起きました。PBなんて自社の商標を入れれば作れると甘く見ていたのですが、とんでもない。ひとたびリコールになれば、小売りの我々が回収しなくてはならない。リコールの告知だけで何千万円、商品の回収でさらに何千万円というコストがかかるわけです。これは生産管理や品質管理をちゃんとやらないと、大変なことになると思い知りました。そのための人材が欲しかったのです。

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「ベビー服店で輝く「リストラ技術者」」の著者

大西 康之

大西 康之(おおにし・やすゆき)

ジャーナリスト

日本経済新聞産業部記者、欧州総局(ロンドン)、日経ビジネス編集委員、日本経済新聞産業部次長、産業部編集員などを経てフリーのジャーナリストに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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