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南鳥島沖の夢の「レアアース泥」に迫る中国の脅威

東京大学大学院教授、加藤泰浩氏に聞く

2014年6月4日(水)

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南鳥島沖の深海に堆積するレアアース(希土類)を豊富に含む大量の泥。東京大学の加藤泰浩教授は企業と協力して実証実験を急いでいる。だが、そのすぐ南側で中国が深海鉱物資源の探査鉱区を獲得していることが判明した。「狙いはレアアース泥」と加藤教授は危機感を募らせる。レアアース価格の下落で、代替生産地の開発は遅れ気味だ。中国依存から脱却するには何が必要なのか。第一人者が語った。 (聞き手は山崎 良兵)

世界貿易機関(WTO)が中国のレアアース(希土類)の輸出規制は不当との判断を下しました。中国は上訴する意向を示していますが、不利な情勢にあります。レアアース価格も2010年に起きた尖閣諸島の問題で高騰した頃と比べて下落しており、危機は去ったと見方も広がっています。

加藤:レアアースの使用量を減らしたり、代替したりする技術は確かに進歩しています。しかしレアアースが不要になることはありません。世界で圧倒的な生産シェアを持つ中国の脅威がなくなったのかというと、決してそうではない。

 日本のレアアースの輸入総額は年間600億円くらいです。しかしレアアースを使って、酸化物やエレクトロニクス関連材料などを作ると、5兆円もの価値になります。日本のGDP(国内総生産)の実に1%程度を占め、価値は100倍近くになります。用途も実に広い。インフルエンザ治療薬の「タミフル」や「リレンザ」から、よく飛ぶゴルフボールにまで幅広く、研究中の新素材も数多い。日本の産業にとり、レアアースの重要性は今も変わっていません。

加藤教授は、日本近海の海底にあるレアアース資源の重要性に、以前から注目されています。

加藤:海底の鉱物資源を採掘して、日本が資源大国になるという話は夢物語ではありません。目的は資源開発自体にあるのではなく、むしろレアアースを有効活用して「モノ作り国家」である日本を再構築することが大事です。今は(産業規模が)5兆円でも、うまく活用できれば10兆円に成長する可能性もあると思っています。

 「レアアースを使わなくても大丈夫」「もう不要だ」といった考え方は完全に間違っています。危機は去ったという論調や、日本が中国に勝ったといった論調はとんでもないウソで、根本的に誤っています。例えば、「レアアース不要の磁石を開発」といった報道もありますが、よく見ると、「ディスプロシウム」という一部のレアアースの使用量が削減できるだけで、ほかの種類のレアアースは必要だったりする。代替材料の開発も報じられていますが、実用化、産業化まで持っていける例は現段階ではほとんどありません。「実用化を目指す」といった言葉はもう聞き飽きました。

南鳥島沖のレアアース泥の研究に取り組む東京大学大学院の加藤泰浩教授
加藤泰浩(かとう・やすひろ)
東京大学理学部地学科卒業、同大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士)。日本学術振興会特別研究員、山口大学理学部助手、米国ハーバード大学客員研究員、英国ケンブリッジ大学客員研究員などを経て、現在は東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター教授。2011年「ネイチャー・ジオサイエンス」誌で太平洋の海底にレアアースを含む泥の大鉱床があることを発表、国内外で注目を集めた。

南鳥島沖で発見されたレアアース泥は深海にあるので採掘が難しいという指摘もあります。

加藤:日本政府がバックアップしてくれるなら、必ず開発できます。レアアース価格が下がっても対抗できるような様々な工夫を考えており、手ごたえもあります。詳細は欧米の学術誌に発表する方針なので、まだ明かせませんが、海底資源の採掘技術を持つ企業とも連携して、開発に向けた準備を着実に進めています。

 「南鳥島沖に中国の鉱山の30倍超の高濃度のレアアース」と昨年3月に新聞などで報じられた直後に、ネガティブキャンペーンが始まりました。水深5000mなので、30年かけても採掘するのは難しいと言った内容です。中国など海外からのレアアースの輸入にかかわっている企業と関係者にとっては、ビジネスにマイナス影響を与える。だから否定的な話が報じられているのかもしれません。

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「南鳥島沖の夢の「レアアース泥」に迫る中国の脅威」の著者

山崎 良兵

山崎 良兵(やまざき・りょうへい)

日経ビジネス記者

日経ビジネス編集部、ニューヨーク支局、日本経済新聞証券部を経て、2013年1月から日経ビジネス編集部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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