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“立場主義”が日本を破滅させる

「魂の脱植民地化」の必要性を訴える安冨歩・東京大学教授に聞く

2014年7月25日(金)

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 東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、東京大学関係者を中心とする日本の専門家や権威には共通する欺瞞に満ちた話法=「東大話法」があると指摘して注目を集めてきた東京大学教授の安冨歩氏。背景には、何にも増して「立場」を重視するという世界的にも特異な日本社会の在り方が大きく影響してきたという。

 近著『ジャパン・イズ・バック 安倍政権に見る近代日本「立場主義」の矛盾』では、安倍晋三政権はもはや機能しなくなりつつある「立場主義」を何としても維持したい「立場ある人たち」のものでしかない、必要なのは安倍首相が繰り返し強調する「強い日本」ではなく、状況の変化に柔軟に対応できるしなやかさを持った社会の形成だと強調する。

 その安冨氏に安倍政権の本質と、今、日本社会が進むべき方向性とその考え方について聞いた。(聞き手は石黒 千賀子)

安倍晋三政権は昨年末、特定秘密保護法案を衆参両院で可決、この7月1日には、憲法の解釈変更による集団的自衛権行使容認も閣議決定しました。強引な手法から支持率はさすがに低下してきていますが、久方ぶりの長期政権となりそうです。

安冨:経済政策のアベノミクスも国家主義的動きも基本的には政策としては間違っています。しかし、高い支持率はこの間違った政策を国民が望んでいる、ということを意味します。国民はだまされているわけではありません。なぜそういうことになるのか。

 私の考えでは、多くの日本人は「立場主義者」であり、「立場」をなくせば生きていけない、と思い込んでいます。日本経済が行き詰まったのに伴って多くの人の立場が失われつつある中で、安倍政権は人々の立場を無理矢理にでも作り出すという機能を果たしています。だから多くの人が自分の立場が守られるような気がして、支持している。

「立場」のない人にも「立場」与えた安倍政権

安冨 歩(やすとみ・あゆむ)氏
1963年大阪府生まれ。1986年3月、京都大学経済学部卒業後、株式会社住友銀行勤務。1991年京都大学大学院経済学研究科修士課程修了後、京都大学人文科学研究所助手を経て96~97年、英ロンドン大学LSE(London School of Economics and Political Science)の滞在研究員。1997年、「『満洲国』の金融」で同大学院にて博士を取得、第40回日経・経済図書文化賞受賞。同年名古屋大学情報文化学部助教授、2000年東京大学大学院総合文化研究科助教授、2003年同大学院情報学環助教授を経て、2007年東京大学東洋文化研究所助教授、2009年より同教授。
主な著書に、「原発危機と『東大話法』」「もう『東大話法』にはだまされない」「学歴エリートは暴走する」「生きるための経済学」「ドラッカーと論語」など多数。(写真:山田哲也、以下同じ)

 まず、もともと固い「立場」を持っている既得権益者たちに対しては、財政赤字を拡大させてでも景気刺激策だの、医療費、年金といった形で彼らのパイを守るための資金を提供しているので、当然支持されますね。

 ただ、実際には既得権益者のパイを守るために資金を出しているのではありません。エリート官僚が自分の立場、つまり天下り後の何千万円という自分の年収を維持、確保するために、古賀茂明氏の言葉を借りれば彼らの「生活設計」のためにやっているのです。ただ、それに対して人々が文句を言わないように、財政が破綻しているというのに、既得権益者たちに小金をばらまき続けて黙らせている、というのが実態です。

 一方、すべての立場から排除された人には、「日本人である」という「立場」を与えることで、パイを与えずして支持を獲得しています。ご存じのように、デフレもあって20代、30代の年収は近年下がり続け、非正規雇用者比率は、2013年は36.2%と、バブル最中の1990年の20%から倍近くに増えています。そこそこの大学を出たり、能力を持っていても、ひとたび正社員のレールからはずれると、右肩下がりの経済と雇用不安から結婚や家族を持つこともままならない人が少なくありません。

 そんな人たちにとって唯一残された立場が「日本国籍」です。安倍さんが連呼する「強い日本を取り戻す」によって、彼らは自分たちの「日本人」という立場が強いものになると感じ、惹かれるのでしょう。中国との対立を煽ることで、その立場の感覚はリアルなものになっています。もし徴兵制が始まれば、それこそ本物の立場が得られるわけです。

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「“立場主義”が日本を破滅させる」の著者

石黒 千賀子

石黒 千賀子(いしぐろ・ちかこ)

日経ビジネス編集委員

日経BPに入社後、英LSEに留学し修士取得。日経ビジネス、日経ナショナルジオグラフィック、日経ベンチャーを経て、2003年日経ビジネスに編集委員として戻る。主に、本誌の「世界鳥瞰」の欄を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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