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誰もが満足しないオフィスはなぜ生まれる?

日本企業は“働きやすさ”への気遣いがなさ過ぎる

2014年7月30日(水)

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 オフィスワーカーの“働き方”はここ数年で大きく変わっている。IT技術の進歩によってどこでも働けるようになったことはもちろん、子育てのために男女を問わず在宅勤務をするといったことも珍しいことではなくなった。

 こういう流れの中で、“働く環境=オフィス”に求められるものも変化している。どこでも仕事ができるようになった今、オフィスは、「人が集まる場としての存在」が求められている。単に個人が事務的な作業をするのではなく、オフィスにおいて「人と人がコミュニケーションをとって情報共有すること」が大きな役割になっていく。

 オフィスビルディング研究所の本田広昭代表取締役は、これから企業が必要とするオフィスは、「有能なプレイヤーが集い、濃密な情報交流をしながら知識創造していくセンターオフィス」だという。本田氏は、今後のオフィスビルの未来についてまとめた『オフィスビル2030』を今年6月に出版している。今回は、日本のオフィスの問題点について本田氏に話を聞いた。

 建築法規制などにより、日本のオフィスは、誰がどのように使うかどうか分からないにもかかわらず、新築完成時には内装まで全てが仕上がっていないと使用を開始できない。したがって、お決まりのカーペットに隅々まで高照度で照らされている標準的な事務所で完成させてしまうため、結果的に“誰が使っても満足しない”仕様での提供が続いているという。

(聞き手は小野口 哲)

先日、『オフィスビル2030』の出版に合わせて、開催したシンポジウムでは、今後の日本のオフィス環境は変わっていかなければならないと、繰り返し語られていましたね。

本田広昭(ほんだ・ひろあき)氏
オフィスビルディング研究所代表取締役。1949年北海道生まれ。1977年三幸エステート設立と同時に取締役に就任。1997年オフィスビル総合研究所設立と同時に代表取締役に就任(三幸エステート常務取締役兼任)。2013年オフィスビルディング研究所設立、代表取締役に就任。「日本のオフィスを豊かな空間に!」をモットーにオフィス環境の改善提案を続ける。

本田:これからは、人の能力や知識が主力の時代になります。

 それなのに、今の日本のオフィスは清潔にはなったものの、その多くは、無個性な金太郎飴的なオフィスが氾濫していて、働きやすさや誇りを持てるような環境にはなっていません。企業は、たかをくくっているのかもしれませんが、優秀な人に逃げられるという発想が希薄なのかもしれませんね。これから人材不足になりますし、ますます個性や能力が重要になると思うのですが、釣った魚に餌をやらないような感覚で、人が働く環境というものに関して、経営者は気が付いていない面があると思うんです。

 これからは、人を活かす意味において、働く場の在り方とか、働き方というのは極めて大きなテーマだと思います。ところがそういうものに関して、日本の経営者の多くは投資という感覚が薄く、オフィスはコストセンターと考えている人たちがいまだに多いのが現状です。

日本のオフィスはいまだ“仮の宿オフィス”

本田さんは、以前からそういう認識をお持ちだったのですか。

オフィスビル2030』(白揚社)

本田:私はオフィスビルのテナント仲介を手掛ける三幸エステートの創業者の1人です。かれこれ、40年ほどオフィスの仕事に携わってきました。かつて、日本のオフィスは非常に粗末なものでした。それでニューオフィス運動などが起きたわけです。一方で、欧米のオフィスはとてもきれいなんですよ。どうしてこんなに違いがあるんだろうというのが研究の動機でした。25~26年前の話です。

 その違いの理由の一つが、日本の建築基準法にありました。第7条には、内装を含めて全てが完成していないと検査済み証が発行されないとあります。ところが、欧米諸国はテナントビルの特性である全館入居までの時間差に対応した手続きが用意されていて、それぞれのテナントが求めるデザインの実現を支援するために、未仕上げのまま引き渡されます。そこから各企業が作り込んでいって使っていく仕組みになっています。

 違いの背景は、不動産の契約の手法が大きく影響しています。契約の自由が原則の欧米企業の場合は、10年以上の長期計画を立てて広いスペースを借りておき、将来のスペースは転貸しておき、期限が来たら返してもらい拡張に当てるということをよくやります。こうすることで、経済成長に合わせて長期使用が可能となるため、キチンとしたデザインをして、良いオフィスを作っていくわけです。ところが日本では、借地借家法第28条の正当事由制度により、賃借人が過度に保護されていて、貸主からの契約終了が奪われているので、事実上転貸が成立しないため、2~3年の短期契約オフィスが氾濫するわけです。

 このため、日本企業は、スペースが足りなくなると、ほぼ倍のスペースのビルに移転することを繰り返してきました。そのときに内装をいちいち作っていたら大変な負担になるので、どのビルもグレーのカーペットに白い壁、白い蛍光灯という標準的な内装になり、借り手の企業はデザインや使い勝手を我慢することになるのです。内装をいちいち作り込んでいって短期で捨てるよりは、必要なときだけ借りればいいやと。日本のオフィスの多くは、今でも、妥協の産物になっているわけです。

 こうして日本では、誰が使ってもいいんだけど誰が使っても満足しないオフィスがあふれることになります。私は“仮の宿オフィス”と言っています。こういう日本の仕組みを私は問題視しているのです。

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「誰もが満足しないオフィスはなぜ生まれる?」の著者

小野口 哲

小野口 哲(おのぐち・あきら)

日経ビジネスアソシエ副編集長

日経バイト、日経モバイル、日経パソコン、日経コンピュータ、日経PC21、日経ビジネスなど日経BP社の雑誌を渡り歩き、2015年4月から現職。趣味・生きがいは“食べること”。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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