Winter Festa2017-2018

アフリカの紛争地と日本をつなぐ架け橋に

ケニアのスラムでカウンセラーを育成

 まずJCCPの最近の取り組みついて教えてください。ケニアや南スーダン、ソマリアで活動されています。

(撮影:新関 雅士)

瀬谷:はい。まず、サファリやマサイ族で知られるケニアの話しをしましょう。ここでは2007年の大統領選挙を機に大規模な暴動が起こりました 。別々の民族から出た大統領候補が、票を集めるために、民族間の対立を煽ったことが原因です。投票に不正があったとの疑惑も、暴動の火に油を注ぐことになりました。そして、数週間で1000人あまりの人が殺され、30万人以上の人が家を焼かれたり、暴動を逃れて避難民となったりしました。

 この暴動を機に、首都ナイロビのマザレというスラムでも焼き討ち、暴行、女性や子供に対する暴力が横行しました。この被害者に対する心のケアに取り組んでいます。被害者の中には、「民族が違う」というだけの理由で友人に脇腹を刺された20代の若者や、8人の男性にレイプされた10歳の少女もいました 。警察官に射殺された人もいます。治安を乱したという理由ではなく、その警察官が特定の陣営を支援していたからと言われています。

悲惨な話ですね。具体的にはどのような支援をしているのですか。

瀬谷:地域の若者の中から30人を選び、コミュニティー・カウンセラーとして育成しました。スラムの中に「この状況を改善したい」「このような事態を二度と起こしてはならない」と考えている志ある若者がいました。しかし、彼らはどうすればよいのか分からなかった。なので、カウンセラーとして被害者を助ける方法を伝えました。

 被害者の中には心の傷を負い、怖くて外に出ることができなくなってしまった人が数多くいました。しかし、マザレスラムでは「心の傷」の存在そのものが知られていないので、治療が必要であるにもかかわらず放置されていたのです。人によっては「なぜ、なまけているんだ」と暴言によるさらなる被害に遭う人もいました。

 体のけがは目に見えるし、赤十字のような組織が対応していました。しかし、心の傷に対するケアを提供している支援団体は一つもありませんでした。JCCPが取り組むプロジェクトを選択する時の基準の一つは「ニーズはあるけど、やり手がいないもの」。カウンセラーを育成し、心のケアの取り組むプロジェクトはこの基準に合うものでした。

 こうした被害者を救う役割を担うのがコミュニティー・カウンセラーです。

日本から専門のカウンセラーを派遣するのではだめなのですか。

瀬谷:確かに、その方が質の高いカウンセリングを提供できるかもしれません。しかし、被害者の数が非常に多いので、日本から連れてくるカウンセラーだけではとても足りません。それに、このカウンセラーが帰国した後、マザレスラムには何も残りません。

 なので、富裕層向けにカウンセリングを提供していたケニア唯一の機関からも講師を派遣してもらい、集まった30人にトレーニングをしました。内容は、例えば被害者の話をどう聞くかといった基本的なことから始めました。あいづちの打ち方や、アイコンタクトの仕方。話しやすい雰囲気作りですね。当初は、被害者の話を聞かずにお説教をしてしまうメンバーもいました。

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著者プロフィール

森 永輔

森 永輔

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

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