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日中の歴史を「ナショナリズム」の視点で読み解く

ネイションにすがる大衆がもたらす負の影響

2014年9月10日(水)

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 中国、韓国との関係が悪化している中で、「ナショナリズム」という言葉を見かける機会が増えた。ナショナリズムとはそもそも何なのか。国や国際関係にどのような作用をもたらすのか。日本でも数少ないナショナリズムの研究者、植村和秀・京都産業大学教授に聞いた。同教授は、ナショナリズムが「力強さ」と「一体化」へのこだわりを強めるとネガティブな状況が生まれる可能性があると指摘する。

(聞き手は森 永輔)

中国や韓国との関係が悪化している中で、「ナショナリズム」という言葉を見かける機会が増えました。ナショナリズムとは、すなわち何なのでしょう 。

植村:一致した定義はなく、正体不明のものです(笑)。ただ、私はネイションに対する肯定的なこだわりと定義しています。「ネイション」という言葉を日本語にできればよいのですが、一言で説明できる便利な日本語はありません。「ネイション」は非常に多様な意味を持っているからです。「国家」と言っても、「国民」と言っても、「民族」と言っても、いずれも「ネイション」の一面しか表すことができません。なので、ネイションをそのまま使っています。

植村和秀(うえむら・かずひで)氏
京都産業大学法学部教授
1966年生まれ。京都大学法学部卒業。専門は政治思想史、ナショナリズム論。著書に『昭和の思想』『日本のソフトパワー』『ナショナリズム入門』など。

 ネイションは、まずまとまった土地を確保し、そこに歴史を積み重ね、認知を獲得していくことで現われてきます。ネイションとはネイションと認められたもの、「できてしまったもの」です。歴史の中身を詰めるのに好適なのは、文化か国家、あるいはその両方です。

 ナショナリズムの存在をネガティブに捉え、「なくすためにはどうすればよいか」と考える人が多いですが、私はそうは思いません。ナショナリズムは煩悩のようなものです。後ろ向き、内向きになれば、危険を伴います。その一方で、元気の素でもある。そして、今すぐなくなるものではありません。なくすことができないならば、あることを前提に、よりましな世の中にするにはどうすればいいのか、を考えたほうがよいと思っています。

幕藩時代から日本のナショナリズムは存在した

植村先生はネイションの動きを時系列で次のように整理されています。まず「目覚め」。この時には少数の者がネイションに目覚め、身を削ってネイションに貢献しようとする。次に近代化を背景に「大衆化」の時期を迎える。多くの人がネイションにこだわりを持つようになる。

 日本の歴史を振り返ると「目覚め」の時期はいつだったのでしょう。幕府と藩があった江戸時代は、藩がネイションだったのでしょうか。

植村:私は、藩はネイションではなかったと考えています。江戸時代から日本をネイションとするナショナリズムが存在していた。政治的には幕府や朝廷があり、日本は1つにまとまっていました。藩が所有する土地は、幕府の権力が保証したものでした。

 経済的にも全国市場が存在していましたし、社会も1つにまとまっていた。例えば松尾芭蕉は全国に弟子がいて、俳人の社会的なネットワークが各地に形成されます。国学などは、文化面における日本ネイションへのこだわりが形となったものでしょう。

 なので、江戸時代から日本をネイションとするナショナリズムが存在していたのだけれど、その必要性を訴えなければならない切迫した状況にはなく、ぼんやりと存在していた、と言うのが適切でしょう。

コメント20件コメント/レビュー

読み返していたら、もう一点コメントしたいことができた。筆者は国際主義を良いものとして描く。しかし、歴史を見るとアレクサンドロスの『民族融和』や古代中国の『天下』、キリスト教やイスラム教による『真理の布教』、ナポレオンやソ連による『革命の輸出』、アメリカによる『民主主義の伝道』など、無関係な国への介入が国際普遍主義的な理念の下に行われるケースは多い。その究極のブラックジョークが、第一次大戦のスローガン『すべての戦争を終わらせる戦争』だろう。悪の帝国をすべて破壊すれば、戦争が始まることは永久になくなるというわけだ。 言われた対象が現代では“第一次”世界大戦と呼ばれていること、そして発言したのがウィルソン大統領である点まで、まさに突っ込みどころしかない。一方、ナショナリズムが戦争の誘因となる事例は、例えば復讐、旧領回復、そして周辺国よりも弱くなることへの恐怖が挙げられる。基本的に傷つけられた・傷つけられると思い込んだ時なのだ。自足したナショナリズム、すなわちジョージ・ケナンなどにみられる保守主義は、どこまで行っても妥協を否定する宗教戦争に走る危険を内包した国際主義よりも国際社会の平穏と繁栄にも有益だろうと私は考えている。まあ、ナショナリズムを自足させるのは結構難しい作業だけど。(三諸)(2014/09/10)

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「日中の歴史を「ナショナリズム」の視点で読み解く」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

読み返していたら、もう一点コメントしたいことができた。筆者は国際主義を良いものとして描く。しかし、歴史を見るとアレクサンドロスの『民族融和』や古代中国の『天下』、キリスト教やイスラム教による『真理の布教』、ナポレオンやソ連による『革命の輸出』、アメリカによる『民主主義の伝道』など、無関係な国への介入が国際普遍主義的な理念の下に行われるケースは多い。その究極のブラックジョークが、第一次大戦のスローガン『すべての戦争を終わらせる戦争』だろう。悪の帝国をすべて破壊すれば、戦争が始まることは永久になくなるというわけだ。 言われた対象が現代では“第一次”世界大戦と呼ばれていること、そして発言したのがウィルソン大統領である点まで、まさに突っ込みどころしかない。一方、ナショナリズムが戦争の誘因となる事例は、例えば復讐、旧領回復、そして周辺国よりも弱くなることへの恐怖が挙げられる。基本的に傷つけられた・傷つけられると思い込んだ時なのだ。自足したナショナリズム、すなわちジョージ・ケナンなどにみられる保守主義は、どこまで行っても妥協を否定する宗教戦争に走る危険を内包した国際主義よりも国際社会の平穏と繁栄にも有益だろうと私は考えている。まあ、ナショナリズムを自足させるのは結構難しい作業だけど。(三諸)(2014/09/10)

戦前の日本には国民党という政党はありません。犬養毅は立憲政友会の党首でした。このような基本的なことを間違えるようでは学者としては疑問符がつきます。(2014/09/10)

記者の発言の中で、「孫文が辛亥革命を起こした」というくだりは、いかがなものでしょうか。辛亥革命が起きた時、孫文は国外にいたわけですよね?どうも日本人には孫文を過大評価する人が多いようで、気になります。(2014/09/10)

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