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『21世紀の資本論』って、何が新しいの?

飯田泰之明治大学准教授に聞く

2014年9月12日(金)

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 『21世紀の資本論(Capital in the Twenty-First Century)』。フランス人の経済学者、トマ・ピケティ(43歳)の本が米国で大ブームだという。「資本主義は貧富の格差を生み出す宿命から逃げられない」ことを論じた本だ。日本でも経済誌が特集を組むなどブームが波及しているようだが、正直言ってなぜそんなに大騒ぎするのか分からない。「格差社会」や「ロスジェネ」といったバズワードで、さんざんみんなで話したじゃないか。いったいどこが新しいのだ? 明治大学の飯田泰之・政治経済学部准教授にお聞きしてみると「…そうですよねえ」と言う。あれ?

(聞き手は山中浩之)

飯田 泰之(いいだ・やすゆき)
経済評論家、明治大学政治経済学部准教授。1975年東京生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程満期退学。駒澤大学経済学部 准教授などを経て現職。2007年より知の交流スペース「シノドス」の運営に参加。シノドスのマネジング・ディレクター、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員も務める。専門は経済政策、マクロ経済学。著書に『経済学思考の技術』 『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』 『思考をみがく経済学』など。

―― 原著を読破してから文句を言うのが王道だろうとは思うのですが、700ページの大著を英語で読み切る根気も語学力もないので…。

飯田:電話でも予めおことわりしましたけれど、私も、サマリーと重要そうな章しか読んでないですよ。

―― では、そんなやつらが話し合うのだという前提で(笑)。日本のメディアに出ている話だけでの印象ですけれど、どうも米国では「資本主義体制下では、富裕層ほど豊かになりやすい」ということが発見として語られているらしいのですが、今ごろ気が付いたということなんですか、もしかして。

飯田:米国ではそういうことなんでしょうね。

―― うはっ(笑)。

飯田:フランス本国では、ブームというほどでもないという話も聞きます。

面白いというより、とても真面目な本

―― 日本で訳されている山形浩生さんに「面白いですか?」とお聞きする機会がありまして、そうしたら「本としては『各国で富の格差は拡大している』ということを厳密に、しつこく、むずかしく証明している本ですよ」と。じゃあ、何でこんな話題になっているんですか、クルーグマンが激賞しているそうじゃないですかと言ったら「クルーグマンは学者ですもん」と。

飯田:経済学者ならば「こういう証明の仕方があったか」という面白さがあります。さらにクルーグマンにとっては(米国では)数少ない流行したリベラルな経済論ですから、そりゃ応援したくもなるでしょう。

―― 先進国は労働分配率が長期的に低下し、資本の蓄積が増えるほうが国民の所得の伸びよりも速い。資本の蓄積は富裕層に大きく分配される、でしたっけ。それを200年以上の期間に及ぶ統計データから証明し、「格差の拡大のメカニズムが、資本主義・市場経済にはビルトインされている」と。うーん…我ながら無学って怖いですね、こう聞いてもあまり驚けない。

飯田:米国では「そのぐらい格差があってもいいじゃん、逆転可能なんだから。脱出できない貧困、乗り越えられない格差は存在しないんだよ」という言説が支配的だったので、この視点が新鮮だという点は踏まえておかなければならないと思いますね。

―― 面と向かって「いいや、この仕組みがおかしいんだ」と言われて驚いた。

飯田:「逆ホリエモン」「逆竹中平蔵」みたいなもんです。

―― ああ、おふたりの主張は「米国なら当たり前、でも、日本では大ショック」でしたが、ピケティのお話はその逆だった。

飯田:という話なんじゃないかなと。もちろん、僕の勝手な想像ですけれども。

ピケティは半分だけ間違えているのではないか

飯田:「自助努力で乗り越えられない格差は存在しない」という“常識”、それが米国を支えてきたのですが、そこに疑問が呈された。やっぱり成功している人は、まあ、おおむね学歴が高い。あるいは、特殊専門技能を持っている。もしくは、親から継いだ財産や社会的基盤がある。「売れ残った馬車の幌用の布で、炭鉱夫用のズボンを作ったら世界的大企業になりました」とか、そういうことはもう、そうはないんですよ。

―― リーバイ・ストラウスの伝説ですね。

飯田:『21世紀の資本論』は、12月に翻訳本が出るんですが、日本ではそんなに話題にならないと思うんです。今これだけ話題になっているのは、読んだ人が少ないからではないでしょうか。200年分の税務資料に当たるというファクトファインディングは大変なものだと思うけれど、出てくる結論は当たり前のことだった。

―― では飯田さんもやはり「資本主義は必然的に格差を生む」と。

飯田:それは半分正しくて半分間違えていると思います。

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「『21世紀の資本論』って、何が新しいの?」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師