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「一人一殺」。一生かけて男ひとりを変える

特別鼎談:「女性活躍社会」のウソとホント(下)

2015年1月30日(金)

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 にわかに盛り上がる、女性活躍推進の波。フェミニズムの専門家によると、この動きは「まやかし」だという。1970年に始まったリブの運動から40年強、「女性の働き方」が関心を集めるいま、改めてフェミニズムの先輩たちから、まやかしを見極める視点を学びたい。

 フェミニズム論壇を率いる上野千鶴子さん、映画「何を怖れる~フェミニズムを生きた女たち」を公開した映画監督の松井久子さん、著書『女子のキャリア』が話題を呼んだ雇用ジャーナリスト海老原嗣生さん。3人の論客が「女性活躍社会」の課題を斬る。シリーズ3回の最終回は、夫婦のあり方、そして男と女の意識を考える。

(司会・進行は野村浩子=ジャーナリスト・淑徳大学教授)

女性の働く環境を整えても、家事・育児・介護を誰が担うのかという問題が残ります。映画の中で、のちに横浜市女性協会の館長になられた桜井陽子さん(注1)は、幼い子どもを育てていたとき、夫婦できっちり家事当番の日をつくり、互いに手を出さなかったとか。なかなかそこまで出来ないと思います。

注1)桜井陽子:1947年生まれ。社団法人勤務、主婦、パートを経て編集プロダクションを設立。主婦の再就職支援活動で実績をあげ、横浜市女性協会職員に。のち館長などを歴任。現在は世田谷区立男女共同参画センター館長。

上野:夫が「自分はほかの父親に比べるとよくやっている」と言うのに対して、「ほかの男と比べてもだめ、私と比べてどうかということが問題なのよ」と。あの台詞はよかったですね。今どきの女は、こんなせりふをちゃんと夫に言いますかね。

上野 千鶴子(うえの・ちづこ)さん
東京大学名誉教授、立命館大学特別招聘教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。著書に『家父長制と資本制』(岩波書店)、『ナショナリズムとジェンダー』(青土社)、『おひとりさまの老後』(法研)、『女たちのサバイバル作戦』(文藝春秋)など多数。

海老原:桜井陽子さんはすごい。彼女が「今日はあなたの番だから」とご飯を作らず空腹で子どもと一緒に夫の帰りを待っている。普通の旦那は、自分が遅れたことを棚に上げ、「子どもが腹をすかしている」と怒るでしょう。でもね、その逆を考えてみてください。当番だった奥さんの帰りが遅れてたら、旦那は遅れた奥さんを平気で叱責するでしょう。で、遅れて帰ってきた奥さんは「ごめんなさい」と低頭してすぐ家事をする。その違いの矛盾をこれほどまで端的に示してくれたんだから。

上野:私たちの時代には、「一人一殺」という言葉があったんです。テロリストの用語ですが。

海老原:1人殺すという意味?

上野:そう。学園闘争に敗北して、闘ったのに世の中は変わらない、大学も変わらない。何も変えられないけれども、女の全体重をかけて一生に男1人ぐらいは変えようよと。

なるほどねえ。

上野:そのぐらいの気概があった。リブとかフェミニズムの闘争って日常を戦場にしたんです。革命とか街頭行動のように非日常だった闘争を日常に持ち込んだから、夫婦の間の日常が心の安まらない日常になるんです。帰ったら妻に責め立てられるわけだから。でもそうして男と闘争をやってきたわけです、あなたとちゃんと向き合いたいと。その女たちのいくらかは成功し、大半は失敗して離婚しました(笑)。

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「「一人一殺」。一生かけて男ひとりを変える」の著者

野村浩子

野村浩子(のむら・ひろこ)

ジャーナリスト・淑徳大学教授

日経ホーム出版社(現日経BP社)で「日経WOMAN」編集長、女性リーダー向け雑誌「日経EW」編集長などを歴任。日本経済新聞社・編集委員などを経て、2014年4月から、淑徳大学人文学部表現学科長・教授。財政制度等審議会委員など政府審議会委員も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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