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取材じゃなく“就活”で福島原発に行ったんです

第5回:マンガ家・竜田一人氏

2015年3月12日(木)

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 「やられた」と感じたジャーナリスト、編集者は相当多かったのではないでしょうか。

 福島第一原子力発電所の収束作業に現場作業員として潜り込み、その実態を自ら体験、そしてその成果を、「マンガ」で世に問う。マンガ週刊誌「モーニング」(講談社)で2013年10月31日号に初めて掲載された『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』は、硬派なテーマを、圧倒的なリアリティにペーソスを絡めて紹介するルポとして人気を集め、昨年4月の単行本第1巻は新人としては異例の15万部スタート。その後も不定期連載を重ねて第2巻が今年2月に発売されました。

『いちえふ』1巻(左)、2巻(右)

 私も編集者の端くれとして、「こんな手があったのか、思いついたヤツは天才だ」と唸りました。こう思う誰しもの頭に浮かぶのは、『自動車絶望工場』(鎌田慧)でありましょう。1973年に出た、トヨタ自動車の本社工場に期間工として働いたジャーナリストによる、工場現場の過酷さを徹底的に批判した潜入ルポです。事態の大きさ、重さを考えれば、『いちえふ』は、それを凌ぐ企画といえる。それを、マンガという、人に説明するのに最適な方法で軽やかにやるなんて…。

 こんな企画を思いついた竜田一人(たつた・かずと、潜入取材のため仮名)さんは、いったいどんな人なんだろう。『いちえふ』を描くまでは(失礼ながら)、売れないマンガ家だったとのこと。3.11でこういう人生の変わり方をした人も珍しい。ご当人は「高給と好奇心とほんのちょっとの義侠心」で現地入りしただけで、マンガにしようとは考えていなかったと他のインタビューではお答えになっているのですが、本当でしょうか? やっかみ半分、好奇心半分で、お話を聞きに行きました。

(聞き手は 山中 浩之)

よろしくお願いいたします。写真…は、もちろんNGなんですよね。ええと、今年50歳になられる?

(以下、画像は全て©竜田一人。拡大画像ではそのページの全コマがご覧頂けます)

竜田:もう50歳になりました。

じゃあ、私と同世代ですね。マンガ家を目指されたのはいつ頃ですか。私と同じようなマンガを読んできたんじゃないかと思うんですが。

竜田:マンガは子供のころから好きで読んでいましたし、小学校のころは「マンガ家になりたい」の気持ちは多少ありましたけどね。好きだったのは、矢口高雄さん。

あ、釣りバカ…

竜田:じゃなくて『釣りキチ三平』。

マンガにも本気になれず、就職しましたが…

失礼しました、ハマちゃんじゃなくて三平君のほうですね。インタビューを読んでいたら、時代劇マンガの平田弘史さんがお好きとか。

竜田:そうですね。平田弘史先生は大学のころですかね。

さすがに小学校から読んでいるわけないですよね。

竜田:小学生があれを読んだらちょっと気持ち悪いですよね(笑)。学生時代に読んで衝撃を受けまして。当時たしか全集が刊行され始めて。貧乏だったんですけど、まあ、無理して買いました。

マンガ研究会とか入りました?

竜田:ちゃんとしたサークルもあったんです。そこは某I先生が出たりする立派なところなんですけど、そういうところではなくて同好会みたいな、全然漫研とは呼べない程度のところで。それもちょこちょこやっていた程度で、本気でこれでプロになれるともあんまり思ってなかったし。でも「なれたらいいな」ぐらいで、たまに新人賞に応募するみたいな。

応募はしていた。今回『いちえふ』を持ち込まれた「モーニング」とかにも?

竜田:モーニングは読んではいましたね。『ああ播磨灘』(さだやす圭)が始まったころ。

ものすごいころじゃないですか。『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ)も同じ時期でしたね。

竜田:「モーニング」にも(新人賞応募に)出したかな、分からないけど、若いころだから。そのころは本当に下手くそだったので。

じゃあ、卒業してから普通に就職されたんですか。

竜田:1回普通の会社に入ったんですよ。新卒で。そこを3カ月か4カ月ぐらいで辞めちゃって。

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「取材じゃなく“就活”で福島原発に行ったんです」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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