グーグル自動運転開発者、教育転身の理由

セバスチャン・スラン氏に聞くAIと労働者の未来(上)

 恐らく日本でも同じだと思うが、1~2世代前の労働者は誰でも職業選択は人生に一度きりというのが当たり前だった。それが今や、米国の労働者の平均在職期間は5年以下まで短縮した。ウーバーやリフト、エアビーアンドビーなどの企業が新しい形の雇用を生み出しているように、テクノロジーは中間業者を淘汰し、雇用のあり方を激変させている。我々の仕事はますます不安定なものになり、何度も仕事を変えながら生きる人が増えるだろう。

人間は機械に追いつけない

そうした考えは自動運転開発の経験がベースにあるのか。

スラン氏:グーグルで自動運転車の開発を始めた当時、その性能は非常に未熟なものだった。しかし、何度も何度も失敗を重ねながら訓練を繰り返すと、クルマは毎年のように何倍も賢くなっていった。まさに指数関数的な進歩だった。機械はひとたびある課題をクリアすると、二度と同じミスを犯さない。しかも全ての機械が同じ能力を同時に獲得する。これは、世代を経るたびにゼロから教育し直す必要のある人間とは全く異なる性質だ。

 もちろん、友人の中にはマーク・ザッカーバーグ(フェイスブックCEO)のように「機械化が進んでも人間の仕事は常に残る」と考える人も多い。だが私は、楽観主義者ではない。人間が機械の進化に追いつくのは困難で、両者が逆転する「転換点」はいずれ来る。

 我々は機械が人間の仕事を代替するという、非常に根源的な変化の中にいる。歴史を振り返れば、かつての農業社会が機械の発明によって製造業中心の社会に移行し、その後のロボット技術の発達を受けて現在はサービス業中心の社会になっている。しかし、その状況も変わりつつある。今後はあらゆるサービスが自動化され、人事、金融、税務、教育、公共サービス、医療などが劇的に効率化し、人間の雇用は激減していくだろう。ごく一部の人だけが真に意味のある、満足のいく仕事に就ける一方、その他大勢の人々は機械に対する競争力を失い、仕事があるだけで御の字という底辺に沈む世界が来る。

機械化が進行する社会で生き残る労働者の条件とは。

スラン氏:私は自分の息子に対し、今後は新しい知識を素早く学ぶことが大切になると言い聞かせている。教育を受けるのは人生に一度だけ、学位を取得するのは人生に一度だけ、という考えは時代遅れになり、新しいスキルを一番速く学んだ人が勝つ時代が来る。

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著者プロフィール

田中 深一郎

田中 深一郎

日経ビジネス記者

日経新聞科学技術部、証券部を経て、2012年4月より日経ビジネス記者。

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