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アメリカを動かす「反知性主義」の正体

森本あんり・国際基督教大学副学長に聞く

2015年4月24日(金)

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 イラク戦争のころ、米国駐在の友人が「こっちの人は、『Save Iraq!』ってステッカーをクルマに貼ってるんだぜ」と驚いていました。世界中から突っ込まれても平気で我が道を行く、どうしてそこまで己を信じることができるのか。脚下照顧の国に生きる私たち、慎み深い日本人には分かりにくいところです。どうやら米国の底流に「反知性主義」とやらがあるせいらしい。え、語感からして、ものすごくやばい感じがしますが…

(聞き手:山中浩之)

森本 あんり(もりもと・あんり)
1956年神奈川県生まれ。国際基督教大学、東京神学大学を経て、プリンストン神学大学博士課程修了。現在国際基督教大学人文科学科(哲学宗教学)教授・学務副学長。プリンストンやバークレーで客員教授。主な著書に『ジョナサン・エドワーズ研究』『アジア神学講義』『アメリカ・キリスト教史』『アメリカ的理念の身体』など。

このところよく目にする「反知性主義」という言葉があります。字面からは「科学や論理的思考に背を向けて、肉体感覚やプリミティブな感情に依る」ような印象を受けるのですが。

森本:もともとの「anti-intellectualism」のニュアンスは、ちょっと違います。ネガティブな意味もありますけと、それだけじゃない。すごく誤解を招きやすい文字の並びですけれどね。

たしか『アメリカの反知性主義』(リチャード・ホフスタッター)という、1963年に書かれた歴史的名著で、ピューリッツァー賞を取った本が…

森本:はい、彼こそが「反知性主義」の名付け親です。『アメリカの反知性主義』は、今読んでもまったく古びていないすばらしい本だと思いますが、読まれましたか。

えー、実は7年前から本棚にはあるんですが、前書きしか読んでいません。タイトルだけ見て、「ああ、やっぱりアメリカ人って、進化論を否定する人も多いとか言うし…」と、かえって偏見を深めていたことが、先生の『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』を読んで、初めて分かりました。

森本:あ、そっちはすぐ読んでいただけたんですね(笑)。

この、反知性主義(※以下、特記なき限り米国でのそれを指します)というのは、正直、日本人にはどうにも理解しにくいのではないかと思います。米国人にとっては自明のことから説明してもらわないと、我々には「なぜそうなるのか」が分からない。

「アメリカってなんでこう子どもっぽいのか」

森本:ええ、米国のキリスト教がたどってきた歴史を知らないと、なぜアメリカ人の中に反知性主義が生まれたのかは分かりにくいです。

でも「反知性主義はアメリカのキリスト教の発展に伴って生まれてきた、この国の底に流れる思想」、というところだけは、歴史を知らなくてもなんとなく分かるので、そうなると私なんかは「ああ、進化論を否定して、宗教的な価値観を押しつけてくる原理主義的な運動かな、また禁酒法とか言い出すのかな」と、もう引きに引きまくってしまうわけです。

森本:わかります。本にも書きましたけど、『アメリカの反知性主義』は「歴史的な名著」なのに、日本でみすず書房が翻訳を出したのが2003年、原著が出てから実に40年かかりました。米国でのキリスト教の独自の発展と、それが生んだ「反知性主義」が、日本人にいかに親しみにくいかが窺えます。

ということは、そこを理解しないゆえに我々日本人は、米国人の、そしてアメリカ合衆国のグラスルーツのものの見方、考えかたがいまひとつのみ込めないのではないか、と。日本で「反知性主義」という言葉が広がりつつある今こそ、正しい意味を知っておく必要があると思うんです。

森本:この本は、昨今の日本での「反知性主義」ブームに乗るつもりはまったくなかったのです。2010年だったかな、アメリカ学会で、反知性主義はアメリカ研究のテーマの一つですから、シンポジウムがあったんですよ。そこで話をしまして、3年前に研究者向けの本を書きました(『アメリカ的理念の身体―寛容と良心・政教分離・信教の自由をめぐる歴史的実験の軌跡』)。それと、『アステイオン』という雑誌がありますでしょう。

サントリーの。

森本:あれに反知性主義について書いたんです。それを読んだ新潮社のSさんからご依頼があって、この本を書き始めたというわけなんです。

この例えはキリスト教徒として、あり?

読む側からすれば、いいタイミングで「真打ち」が出たという感じです。ホフスタッターの本に比べてこの本が読みやすいのは、もちろん日本人が書いたということもあるのでしょうけれど、多くの日本人にとってはクリスマスのイメージしかないキリスト教を、ある意味「身もフタもない」言葉で「そうか、そういうことか」と分からせてくれるところです。

森本:分かりやすいと言っていただければ本望です。

しかし、先生も…「ふまじめ」と言っては何ですけど、もちろんクリスチャンでいらっしゃるんですよね。

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「アメリカを動かす「反知性主義」の正体」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官