• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

誰かが耳を澄ませている---世界諜報戦争の実態

『チャター』全世界盗聴網が監視するテロと日常 ハドリック・ラーデン・キーフ 冷泉彰彦訳 NHK出版 2310円

  • 松島 駿二郎

バックナンバー

2006年4月21日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 オサマ・ビンラディン(表記は本書に従う)はアメリカの懸命な捜索諜報活動をかいくぐって、いったいどこに消えてしまったのだろう。諜報情報網の要は言うまでもなく通信衛星だ。地球上や衛星高度の宇宙で交わされるあらゆる電波系(それ以外にはファイバー系がある)の通信を傍受し解読できる。ビンラディンの一団は最新電子機器に通じていて、始めのころはほとんど無防備に、暗号化しない状態で携帯電話や、衛星通信電話を使っていた。

 ところが1998年にアメリカがビンラディンの通話を傍受したと発表した途端に、電話類を一切使わなくなった。通信の暗号化も賢明なことに取りやめた。暗号文が普通の電信文の中に入り込むと、それだけが目立ってしまい、発信地がたちどころに判明してしまうからだ。

 そして遙か上空の偵察写真撮影衛星に探知されるのを恐れて、疑念を抱かせるような車列で移動するのもやめた。そして通信の必要性が生じたら、手紙を飛脚に託すようにした。パキスタンとアフガニスタンの国境山岳地帯上空にピタリと静止して照準を合わせているアメリカご自慢の電子盗聴網、カメラ監視網はこれで形無しだ。訓練した飛脚は一日200km以上も書簡を運べる。

 こうして諜報網から姿を消したオサマ・ビンラディンの一派は9・11同時多発テロを成功させた。衛星諜報システムを最初に提案したのは『2001年宇宙の旅』の原作者、SF作家アーサー・C・クラークで、1945年という非常に早い時期(まだ人工衛星すらうち上がっていない時期)だった。クラークは3基の衛星を太平洋、大西洋、インド洋上に正確な経度で配置すれば、全世界をカバーできると考えた。

 事実、計算によれば3基で十分なのだ。静止衛星(地球の自転と同期させた衛星)は大きな受信アンテナを広げ、地上から宇宙に漏れてくる電磁波を、そっくり傍受して、地上に送り返す。それを地上の適当なところに配備した巨大なパラボラ・アンテナで受け、内容を解読する。インテルサットが最初に打ち上げられたのは1964年のことで、それ以来米ソ冷戦の期間を通じて30基近くの諜報通信衛星が地球全体をカバーして、静止軌道を飛行している。理論値の10倍、これを過剰といわずして、なんと言おうか。

 あなたの携帯の電話での会話などは、宇宙のどこかで耳を澄ませているアンテナがあることを忘れてはいけない。ジョージ・オーウェルの『1984』的世界は、もう現実のものなのだ。

コメント0

「書物漂流」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「絶対これしかありません」というプランが出てきたら、通しません。

鈴木 純 帝人社長