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あっ! 変身しちゃった
----病を背負い変容する意識を描く

『明日の記憶』荻原浩著 光文社刊 1500円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2006年4月28日(金)

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 2005年の第18回山本周五郎賞受賞作品。デビュー作『オロロ畑でつかまえて』で第10回「小説すばる新人賞」を受賞して以来、荻原氏は破竹の勢いで次々にエンターテインメント系の作品を出し続けていたが、一転、シリアスなテーマに真正面から取り組んだ作品。テーマは若年性アルツハイマー。気がつかないうちにじわじわと忍び寄ってくる脳の破壊。それが引き起こす恐怖。

 まず、ちょっと前までは知っていた横文字名前が思い出せなくなる。ドアの鍵をかけた途端に、鍵をかけたかどうか覚束なくなる。頭の芯に何か堅いものがわだかまっているように感じ、簡単な暗算ができなくなる、人と会う約束を間違える、訂正した記憶がなくなる。時々立ちくらみに襲われる。頭痛が執拗に続く。こんなことは誰でもやや年を食ってくると、当たり前に発生することだ。

 でも重なって起こるとちょっと気になる。書店で『家庭の医学』なんかを立ち読みしてみる。不眠が続く。睡眠薬を処方してもらうために精神科で診察してもらう。MRIで脳をスキャンしてもらう。特に異常はなしとの所見。

 ところが、再呼び出されて、妻と同席のもとインフォームド・コンセントとかやらで、若年性アルツハイマーと宣告される。アルツハイマーは確実な死に至る病だ。主人公と妻はショックを受ける。病魔と闘うといっても有効な手だてはない。

 若年性の場合、今の自分という一人と、着実に脳を侵されて、変身していくもう一人の自分と向き合わなくてはならない。荻原は巧みな語り口でこの一種の二重人格的な状況を語り尽くす。いつまでも変身していく自分を真っ正面から見つめていくのだが・・・。

 物語作家は一筋縄ではいかない、というラストはショックである。

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