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浜砂に神は宿りぬ--  海の民俗学の世界

『ナミイ! 八重山のおばあの歌物語』 姜信子著 岩波書店刊 2000円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2006年6月2日(金)

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『ナミイ! 八重山のおばあの歌物語』

 本を開くと三線の音と、おばあの歌が聞こえてくる。本のページもおばあの声に合わせて踊っている。

 八重山は「やいま」と読む。八重山諸島を代表する島は石垣島。著者の姜信子(きょうのぶこ)は在日の韓国人作家。ある時中央アジアの荒野で「天然の美」というチンドン屋の持ち歌のような歌声を聞き、歌も人と同じように漂流するのだということに目を開かれ、自身も歌を追って漂流を始めた。

 そんな中であるときフッと出会ったのが、石垣島の新城浪さん、誰も浪さんとは呼ばない、ナミイと呼ぶ85歳のおばあちゃん。ナミイの85年の生涯は波乱万丈だった。9歳で沖縄本島の遊郭に売られ、沖縄流の三線と歌と踊りの道に入る。15歳で父親と共にサイパンへ。

 以降、台湾、与那国、那覇、石垣と南の海を転々としつつも、何ひとつ変わらなかったのは三線と歌踊の道。本人はめっぽう明るい。亡くした亭主のカミに「アタシをヒャクハタチ(百20歳)まで生かしておいてください」と祈る毎日。そして誰もそれを疑わないほど元気ハツラツ。

 ナミイを主人公にした映画が出来たというので、東中野のポレポレ座まで出掛けて見た。監督は友人の本橋成一、チェルノブイリの村の物語で、世界的に知られる映像作家だ。いつもやさしい視線で、困難に生きる人々を捉えることで定評がある。

 映画「ナミイと唄えば」は本橋監督の新作。映画は浅草のおばあの独演会をもとに、ナミイの、唄で飾られた、波瀾万丈の半生をたどっていく。明治、大正の日本の流行歌を歌いながらの旅は、三線のリズムが心地よい。

 しかし、姜信子によれば、石垣にヤマトの流行歌が定着したのは、西表島の三井の炭坑に放り込まれ、マラリアが猖獗する中で重労働を強いられた、内地の労働者が帰郷を夢見つつ歌ったのが、八重山に定着したのだという。ここでも歌は漂流している。ナミイの歌う歌ひとつに重い歴史があり、懐メロなどといって、聞いていられない。

 姜の歌を追う旅は八重山の民俗と、暗い歴史をあらわにさらす。映画では美しい海とドラマチックな映像が散りばめられている。あの雲の向こうにニライカナイがあるのだぞ、と本橋は道案内をしてくれているようだ。

 姜には中央アジアで聞いた「天然の美」を追った『ノレ・ノスタルギーヤ』(岩波書店 2400円 税抜き)という歌と心の旅の書物がある。

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