『お寺の経済学』 中島隆信著、東洋経済新報社 1500円(税抜き)
これはお寺業界に構造改革を提起した1冊である。
日本のお寺は「葬式仏教」「坊主丸儲け」などとバカにされ、檀家から聞こえてくるのは「戒名料が高すぎる」といったグチばかり。もし企業が同じ状況におかれたら、反省し、消費者の声に耳を傾け、サービスの改善に努めるだろう。でないと潰れてしまう。
しかしお寺だって例外ではない、と経済学者の著者はいう。お寺も事業者として「市場動向」に注意をむけ、消費者である信者のニーズに気をくばるのは当然。その努力を怠りつづけたら、1000年の歴史を持つお寺といえども、いまに消滅してしまいますよ、と。
お寺に復活の道はあるのか。著者は、需要サイド(信者)と供給サイド(お寺)の両面から、お寺が抱える問題と再生策を探る。お寺の衰退は、「お坊さんの意識が低すぎる」などと、ソフトの側面からのみ語られがちだ。が、本書は、制度やガバナンスなどのハード面から、経済学のメスでお寺を解剖する。その手さばきとカルテは新鮮かつ明快だ。
檀家制度が生んだ悪循環を断ち切れ!
お寺衰勢の需要サイドの要因は、経済成長と科学の発達である。仏教は、執着を捨てることで苦しみから救われると説く。頼れる医学もなく、生活水準も低かった中世では、苦から逃れるためには、心の持ち方を変えるしかなかった。だから仏教のニーズはあった。
しかし、現代の日本は違う。グルメあり。娯楽あり。高度医療あり。お金と科学で苦そのものを追っ払う。煩悩ウェルカム。仏教の需要が底をつくのもむべなるかな、である。
供給サイドでは、檀家制度に着目する。江戸幕府がキリスト教弾圧のためにこしらえた檀家制度は、いわば完全な保護政策。布教いらずで寝てても布施が入ってくる。こんなお寺から信者の心が離れていくのは時間の問題だ。檀家制度の固定した取引関係が、仏教を骨抜きにしてしまったのである。
現代では、檀家制度がさらなる悪循環を生んでいる。信仰心のない檀家にとって、お坊さんは、葬儀や法事のときだけやってきて、高額な布施を請求する業者にすぎない。布施の金額は、檀家の信仰心に比例して下がっていく。なのに、お寺は何をやってきたか。
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