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地球はウイルスの巨大な培養槽?
爆発する鳥インフルエンザの脅威

『感染爆発 鳥インフルエンザの脅威』 マイク・デイヴィス著 柴田裕之、斉藤隆央訳 紀伊国屋書店刊 1600円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2006年6月9日(金)

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『感染爆発 鳥インフルエンザの脅威』

 鳥インフルエンザに対する危機感が語られるようになって久しい。でも語っているだけでほとんどの人は実際的な行動には移っていないようだ。

 鳥インフルエンザは素早く進化する。デイヴィスはまるで高速道路に乗っているような進化だという。ウイルスに対してはワクチンがある、という図式が定着している現在、新しいウイルス? だったらすぐにワクチンを作ればいい。それも大量に。

 カナダ北部、シベリアのツンドラといった酷寒の地では、夏の営巣のために、水辺に膨大な数の渡り鳥が集結する。最初の鳥インフルエンザウイルスはここで水鳥の腸管で繁殖し始めたらしい。鳥たちは菌を持ったまま南に向かった。水鳥を一次宿主とするA型ウィルスは危険で凶暴なヤツだ。鳥たちはやがて群をなして飛び立ち、その飛行の間中、糞としてウイルスを地上や水辺にまき散らす。

 ウイルス学者が言う「抗原シフト」というものは、種の壁を乗り越える進化。例えば、鳥→ヒトへのシフトといったことだ。さらに「抗原ドリフト」という言葉もある。これはウイルスを構成するアミノ酸が毎年変化することを意味する。

 「抗原シフト」と「抗原ドリフト」が重なったヤツが鳥インフルエンザウイルスであって、そこにパンデミックの到来を恐怖のまなざしで見る人は多い。鳥からヒトへ乗り移るなんて簡単なこと。東南アジアでは既に何件もの死亡例が報告されている。毎年水鳥が北から帰ってくるときにはドリフトした抗原を持っている。すると夏の間懸命に備蓄したワクチンが何の役にも立たなくなる。

 どうすりゃ、いいんだ!

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『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』

『史上最悪のインフルエンザ忘れ去られたパンデミック』 A・W・クロスビー著 西村秀一訳 みすず書房刊 3800円(税抜き)

 「天災は忘れた頃にやってくる」とは寺田寅彦の名言だが、今どき第1次大戦直後の1918~19年にかけて、地球規模で襲ったウイルス(パンデミック)のことを思い出す人はそれほどはいないだろう。でもこのパンデミックは全世界で2500万人とも、学者によっては1億とも言われる死者を出した。

 少なくとも第1次世界大戦の死者より多くの病死者を出したことは間違いない。この病気はヨーロッパに端を発し、恐らく米国を経由して日本にもやってきた。貨物船など航路を通して。

 日本での死者は約25万人、アメリカは当時の人口比率に合わせて50万人の人が死んだ。原因は正確にはわかっていないが、恐らく欧州の西部戦線の不衛生きわまりなく、永遠と思われるほど長く続いた塹壕の中であるという説が有力だ。

 このインフルエンザは都市部で猛威を振るった。世界の大都市、特に米国では人口集中が進み、大都市には決まって巨大なスラムがあった。不衛生なスラムはウイルスの培養基となった。人口稠密、衛生状態最悪、ウイルスは欣喜雀躍と人にとりつき進化した。
 今この災厄を忘れてはならないという意味で本書を紹介する。

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