技術論や戦術論、または監督論など、様々な切り口でワールドカップの総括がなされるでしょう。そちらは専門誌にお任せし、少々違った切り口で「日本代表とJFAの4年間」を考えたいと思います。
前回、日本代表チームと日本サッカー協会(JFA)を「比喩として」企業に例えてみました。しかし、JFAは一般の企業とまったく違う次元の団体でしょうか?
JFAにとっての利害関係者は
JFAは、全国120万人以上の選手や関係者、そしてチームからの登録費やスポンサーからの収入を主たる財源としています。また、サッカーファンは試合のチケットやJFAのロイヤリティを受けた各種商品・サービスを購入する事で直接的にかかわりを持ち、また「サッカーの愉しみ」という無形のサービスを受け取っています。そしてメディアはJFAやJリーグなど各団体が行う試合を取材し、選手にインタビューし、自社媒体を販売します。
近年、企業の広報・PRの手法や、社会へのかかわり方として「ステークホルダー(利害関係者)」という概念が重要視されています。「新聞記者クラブだけを相手にすればいい」という旧来のPR手法から、その企業に関係をもつ幅広い人々、そして社会に向かってのコミュニケーションを行うことが、企業の価値を高める時代となっているのです。
顧客、株主だけではなく、従業員、地域住民、行政当局など、企業活動が影響を与える人々のニーズをとらえ、コミュニケーションすることが求められています。
財団法人日本サッカー協会は、営利を目的としない公益法人です。しかし、その運営のために、様々な局面で事業活動を行い、またサッカー振興のために投資しています。この面での活動は、一般の企業とそれほど遠くない位置にあります。
JFAのこの4年間を、「ステークホルダー」との関係性、というポイントからから考えてみます。各ステークホルダーにとってこの4年間に、どんなメリットとデメリット、利益と不利益があったのでしょうか。
強化費増額するも、目指すべきサッカー像提示できず
まず、第1のステークホルダーは直接の当事者である選手と指導者(JFAでは総称して“サッカーファミリー”と呼んでいます)です。彼らは毎年の登録費を払い、JFAの主催大会に参加しています。これは年齢・性別を問いません。企業で例えるならば、株主と言ってもいいのではないでしょうか。
彼らにとって、この4年間の最大のメリットは、JFA収支の向上です。強化費が大幅に増額されたため、少年層やユース、大学、女子など様々なカテゴリーに対して、これまでにない投資がなされました。特に女子サッカーについては、代表チームを「なでしこジャパン」と名づけて大々的なキャンペーンを行ったうえに、小中学生世代の強化を目的とした「スーパー少女プロジェクト」の実施など、アイデアに満ちた強化策が取られています。
しかし、各世代のチームにとってのお手本、無形の指導方針である日本代表チームの方向性があやふやだったため、「日本の目指すべきサッカー像」は、JFAは最後まで提示することが出来ませんでした。この点では前代表監督のトルシエ氏の目指すサッカーが、多くの指導者に影響を与えた事と対照的です。
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