• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

人は『いじめの時間』で賢くなっていく

人間の関係式を掘り下げる7つの短編小説

  • 奥原 剛

バックナンバー

2006年8月23日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 結婚して間もない頃、妻が心の病気になった。会社で、女性の先輩達からいじめを受けたのである。「あの子はまったく使えない」と吹聴され、内定していた正社員登用を取り下げられてしまった。

 おかげで、新婚時代に読んだ本は、ほとんどがいじめやパワハラに関するものである。妻は毎晩しくしく泣く。本には自殺や訴訟も出てくる。なんとも暗い新婚生活であった。

 いじめをテーマに編まれたこの小説集も、その頃に読んだ1冊である。被害者の視点から加害者を告発する本が多い中、本書は唯一、どちらの味方でもなかった。被害者意識で凝り固まっていた私は、目が覚める思いがした。

 全7編の舞台は学校だが、いじめの原理は大人社会と変わらない。本書の根底にあるのは、次のような人間観である。

 「いじめいじめられる関係式こそ、生きる本質なのじゃないか」(大岡玲『亀をいじめる』)

いじめは、万人の快楽

 『亀を~』の「彼」は、いじめは万人の快楽である、と考えている。「生れ落ちてすべてが思いどおりになる人間など、たぶんいない」。ゆえに人は、思いどおりにならない怒りを、「自分か他人かに向けて発射せざるをえない」。その衝動を誰も抑えることはできない、というのである。

 稲葉真弓『かかしの旅』では、いじめられっ子の中学生が言う。

 「ぼくはたまたまいじめられる側だったけど…ぼくだっていじめの生徒になっていたかもしれない」

 誰の心の中にもナイフはある。だから「ぼく」の言うことも分からないではない。けれど、泣き暮らしている妻を前に、「いじめられるのも、いじめるのも、たいして違わない」とは思えなかった。いや、理屈では分かるのだが、感情が許さなかったのである。

 「ぼく」は家出少年達と旅に出る。それは理不尽な現実からの逃避行でもあったのだろう。

 いじめをやめさせるために、立ち向かう主人公もいる。角田光代『空のクロール』の「私」は、耐えるだけでは何も変わらないのだと気づき、闘うために報復をする。湯本香樹実『リターン・マッチ』では、いじめっ子を1人ひとり呼び出して、1対1の勝負を迫る。

 だが、どの物語も、諍いは解決しないまま終わる。

「超ビジネス書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「タイム・トゥ・マーケット」で売らないともうからない。

栗山 年弘 アルプス電気社長