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魔力を持った美しい数字、素数

『素数ゼミの謎』吉村仁著 石森愛彦絵 文藝春秋刊 1429円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2006年8月18日(金)

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『素数ゼミの謎』吉村仁著 石森愛彦・絵

 誰だって、これは数学のゼミの話だと思うだろう。ところがこのゼミは、大学の堅苦しい教場のゼミナールを短縮した語ではない。夏になるとうるさく鳴き始めるセミのことだ。アメリカのシンシナティ州のある地区に2004年セミが大量発生した。何でも17年ぶりらしい。

 セミは脱皮して鳴いたり小便をまき散らしたりして、短い生涯を終える。その幼生は地下に潜り、そこでじっと地表に出る日を待つ。13年とか17年地中で雌伏した後、一斉に地上に出てくる。狭い限定された地区に一気に50億匹ものセミが出てきて、雌を求めて鳴き始める。

 密度も凄い。1平方メートル40匹という計算になる。ちょっと枝を広げた目の前の樹に、何百、何千というセミが集まり一斉に競うように大きな声で鳴く。短い地上にいる期間になんとしてでも子孫を残さなくてはならない。そこで雄ゼミは声を限りに、大きさを競い合いながら鳴き声を張り上げる。この時期、近くにいる人は電話もかけられないほどの大音響に悩まされる。セミが取りついた樹木は一気に樹液を吸われて枯れてしまう。

 このセミの大発生は記録を取ってみると、ほとんど毎年、北米大陸のどこかで発生していることになる。しかも13年に1度、17年に1度という周期を持っていることも見えてきた。このセミは「周期ゼミ」とも呼ばれている。セミは一般に12年から18年ほど地中で育つ。その中で13年ゼミと17年ゼミが突出して大量発生する。

 注目すべきは13も17も素数であるということだ。例えば13年ゼミと12年ゼミが出会ったとすると交雑が起こる。12年ゼミが13年ゼミと同時に地上に出たとする。交雑の結果12年ゼミも13年ゼミも子孫は半分に減ってしまう。2分の1の確率で12年ゼミと13年ゼミに分かれるからだ。これだけなら何も起こらない。

 セミはなるべく交雑をしない方が有利だ。2つのグループが出会う、例えば17年ゼミと18年ゼミが同時に地上に出てくる可能性は最小公倍数で計算できる。17と18の最小公倍数は306だから、両者が出会うのは306年に1回となる。滅多に出会わないわけだから、交雑の回数も減る。交雑の回数が多いほど、その周期ゼミの数は減少していく。

 数が少ないとせっかく地上に出てきたのに仲間がいなくて、子孫が残せない。その種は絶滅する。素数年だけ地中で過ごす13年ゼミや17年ゼミは地上に出るたびに多くの仲間がいて多くの子孫を残せる。13年周期と17年周期のセミはこうして繁栄を誇るのだ。数百万年か数千万年か後には素数ゼミが集中的に生き残る。

 人間が周期的に素数年蟄居するようになったら、どうなるのだろうか?

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