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ビッグ・バンと酸素原子の大冒険

『コスモス・オデッセイ 酸素原子が語る宇宙の物語』 ローレンス・クラウス著 はやしまさる訳 紀伊國屋書店刊 2200円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2006年9月15日(金)

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『コスモス・オデッセイ 酸素原子が語る宇宙の物語』 ローレンス・クラウス著 はやしまさる訳

 本書の旅はスーパーカミオカンデから始まる。小柴昌俊博士がノーベル賞を獲得した実験施設の、地中深く埋め込まれた水の中の1つの水分子が主人公となる。この水分子にはもちろん1つの酸素原子と2つの水素原子がある。中学生の理科だ。この酸素原子に着目したのが本書である。

 1827年、スコットランドの植物学者ロバート・ブラウンは、水中を漂う小さな花粉の微粒子を顕微鏡で観察した。花粉は何かに突き動かされて、全くランダムに運動していた。この奇妙な運動はブラウン運動と名付けられ、そのまま自然界の未解決の要素として放り出されていた。

 1905年、アインシュタインの「奇跡の年」、相対性理論と同時に、彼はブラウン運動についても研究結果を発表した。ブラウン運動は分子同士のぶつかり合いだとし、その動きを精査すれば、一滴の水の中に含まれる分子の数を特定できるとした。

 我々は酸素を吸って生きている。世界の生物のほとんどにとって酸素は大変重要な原子。この酸素原子がいつどうやって生成されたのか、というところからオデッセイは始まる。

 宇宙の始まりは「ビッグ・バン」という大きな空間と時間の爆発で始まった。

 今ではビッグ・バンはSFではない。ほとんどの科学者はその爆発の寸前まで、宇宙の状況を正確に把握している。ビッグ・バンの直後、といってもほんの1秒後に過ぎないのだが、空間にヘリウムや水素が誕生し始める。

 これでひと安心。空間が膨張して、温度が下がり始めると、原子が相互作用をして、宇宙や地球を構成している様々な物質が生まれていく。生まれるとき原子は崩壊して(核反応だ)放射線を放散する。この放射線は100億年、あるいは200億年ともいわれる時間を生き続け、もし千載一遇(いや実際には1兆分の1のさらに1兆分の1以下の確率で)スーパーカミオカンデに到達する。それを科学者たちはじっと待ち続けている。

 最初の核反応のあたりで、酸素原子が生まれ、酸素は炭素、窒素などと反応をしつつ、約40億年ほど前に小さな生命体を地球上に生み出す。それが次第に大きく、複雑に、多様化し、今地球上に溢れる生命体(ヒトも含めて)となった。

 これが酸素原子の辿った旅程。今、地球は酸素の星といっていいほど、酸素に満ちあふれている。そしてブラウン運動によって、酸素原子は地球のあらゆる隅々にまで広がっていった。一度出来た酸素はそう簡単には崩壊しない。現在、たった今あなたが吸ったり、吐き出した酸素は、ブラウン運動を続けながら、地球全体に拡散していく。

 著者は巧みな例を持ち出す。古代ローマ時代にユリウス・カエサルはブルータスに刺されて死ぬ。その虫の息の下で「ブルータス、お前もか!」と言ったとされる。そのときに吐いた息のなかの(酸素原子)はその後2千年以上の年月のオデッセイの後、地球上に広がってあまねく存在している。今あなたが吸う空気のなかにカエサルの吐いた酸素原子が含まれない確率は100分の1に過ぎない、という確率計算をした数学者がいるという。

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