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『死体とご遺体』は、ビジネスと情けの物語

華やかな広告マンから厳かな湯灌師への転職記

2006年11月15日(水)

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 聞きなれない言葉ですが「湯灌(ゆかん)師」とは、葬儀の前に、死体を洗い清め「ご遺体」にするまでの仕事をする人だそうです。

 〈シャワーを使いながら、遺体を少しずつ丹念に洗っていく〉のが基本。地方によっては、湯灌は江戸時代から、死者の親族によってとり行われていたものだそうで、近年「2兆円ビジネス」といわれる葬儀業界の中でオプション・サービスの1つとして見直されつつあるとか。

広告マンが「湯灌師」になるまで

『死体とご遺体 夫婦湯灌師と4000体の出会い』 熊田紺也著、平凡社新書、700円(税抜き)
『死体とご遺体 夫婦湯灌師と4000体の出会い』 熊田紺也著、平凡社新書、700円(税抜き)

 著者の熊田紺也さんは、大手の葬儀会社で経験を積み、独立、夫婦で「湯灌」の会社を開業して、10年になります。湯灌を始める前は30年ちかくCM業界にいたそうです。中年世代なら「ああ、あれか」と音楽を思い出し心がはずむ、野坂昭如、黒澤明監督が出演したウィスキーのCMの制作にも携わり、バブル景気の頃に制作会社を立ち上げ、華やかなときも体験しました。その人が「湯灌」の仕事に就くわけです。

 景気の傾斜とともに、会社は倒産。社長だった熊田さんは自宅を処分したものの、2000万円の借金が残りました。妻と、ふたりの子供を抱えての失職です。知人の広告デザイン会社に席を置いたものの長続きはせず、宅配便のドライバーとなり再起をはかろうともしました。しかし、うまい具合にはいかず…と、低迷の日々のなかでめぐりあったのが、老人介護の仕事でした。

 今後の高齢化社会を見据え、介護ビジネスは有望だとの読みがあったのだと熊田さんは振り返っていますが、深い洞察によって選んだ結果というよりも、流され転がっていった先がソコだったように、読者としては見えます。

特別な思いはなく、介護の世界へ

 「介護」に特別な思いがあったわけではなく、いっぽうで30年間培ったキャリアをいかせる場がないと判断。選択の余地はさほどあるわけでなし。それでも中高年での転職が比較的うまくいったのは、自分の置かれた状態を冷静に見つめることができたからでしょう。

 意識の上で、寝たきり老人の入浴サービスを「奉仕」ではなく、未経験者であってもできる「仕事」としてとらえる視点がプラスに働きました。重労働で神経をすり減らすことの多い「介護」だけに、割り切りがなければ続けることは困難だったかもしれません。

借金が「介護よりも実入りがいい…」と背を押す

 さらに1年後、在宅入浴サービスの仕事にも慣れた頃、熊田さんは転職を選択します。「遺体専門風呂屋の出前」でした。背中を押したのは、返しきれずにいた借金でした。すでに「介護」で経験を積んだ熊田さんには、ひとが嫌がる仕事への転職についてのハードルは低くなっていました。

 介護の4~5倍の実入りになるという「耳寄よりな話」に、熊田さんは思い切ったわけです。寝たきり老人を風呂に入れるのと、死んだ人を風呂に入れるのと何が違うのか、と。

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