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【第1回】自己診断が作り出す「エセうつ」が増加

  • 小野 繁,江木 康人

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2006年11月22日(水)

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 うつは薬で治るとされています。抗うつ薬の開発により治療効果を上げているという事実と、実際にその恩恵にあずかる人がいる一方で、恩恵にあずかれず治療終結できない人がおります。どこに問題が潜んでいるかを臨床現場からみてみましょう。

 この連載では「うつ病」の患者さんの治療過程における問題について、考えてみたいと思います。「うつ」がどの段階にあるかを自覚することの難しさ、難しさゆえに起こる問題。加えて自己診断が作り出す「エセうつ」と「うつ」の境界をどのように理解し、対応したらいいのでしょうか。

 自称、他称もふくめ、過去にあるいは現在“うつ”に襲われた人は、「うつ」という長いトンネルの中で苦しみ、ここから抜け出た人。出口の見えないトンネルの中にまだいる人。出口は分かったが、出たくない人。さらには出口付近を出たり入ったりしている人など、「うつ」のトンネルをめぐって様々の状態が観察されています。

 実際の社会の中で観察される症状には、周囲の人が見れば「ただサボっているだけではないか」とか、「いい身分だな」「もういい加減に仕事でもしたら」とか思われる人もいるでしょう。このような人をみると「うつ」ではなく「エセうつ」とか「うつモドキ」ではないだろうかと疑いたくなるのも無理はありません。しかし、これを「うつ」ではないと言い切れるでしょうか。逆に計算づくで病気になっている人がいないとも言い切れないのです。

 基本的な問題として、このような「うつ」と呼ばれている人は増加の一途をたどっています。これは我が国に対して、たとえば経済的な損失をも生み出しています。今こそ、「うつ発症の増加」を生み出した日本全体が抱える問題を、医学的な見地と、同時に社会的な見地から、うつその「病理」を分析してみる必要や意義があるものと考えます。

 発症してしまったうつは医学的に対応していくのですが、その予防は如何にという問題になると、医学的な対応だけではとてもカバーできません。うつ発生の要因の中には環境因が大きくかかわっており、そこには日本の経済機構の大きな変化が見え隠れするのです。

 純粋に医学的な対応だけで改善されていく「うつ」はいわゆる内因性の「うつ」といわれ、これに対して心因性の「うつ」もあるのですが、これも医学的な対応をします。しかし、さらに社会的な対応が求められることがあるのです。

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