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思想家 人類学者・中沢新一さんに聞く『三位一体』モデル(後編)

  • 柳瀬博一

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2006年11月27日(月)

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世の中のあらゆる事象を3つの円を重ねた「三位一体」モデルで読み解くと、経済から政治から思想から宗教から人間関係から人生から何んでも分かってくる…そう唱える方が思想家であり人類学者である中沢新一さんです。今回のインタビューはこの三位一体モデルについてお伺いしてます。是非、前編からお読み下さい。

――中沢さんは『アースダイバー』の中でも、神社やお寺やお墓などの宗教的な装置、あるいは天皇家などが縄文にさかのぼる聖なる地を守ってきた、と記されていますね。

中沢新一氏
中沢新一氏

 昔からずっと行われてきたことなんです。本来、権力というもの、あるいはお金というものが持ち得る最大の力は、これじゃないかと思うんですよね。実際、皇室の御料地というのは、本当にすごかった。文字通り手つかずで、みだりに木を切ってはいけないし、もちろん殺生はご法度。権力とお金を得た人間がやるべきことは、このように自ら権力とお金を聖なる場所に戻すことなんです。

土地を手に入れたら、その土地はもう何もしないのがいい

 土地を手に入れる、という行為については、もちろん権力だのお金だのがかかるけれど、いったん手に入れたり買い取ったりしたら、その土地はもう何にもしない。いくらくらいの価値がある、なんてことも一切考えない。

――お金で買った土地を、お金の価値で還元できないものにしてしまえ、ってわけですか。

 そうすれば、動物も喜ぶ。さきほどの宗教団体は、買い取った土地をサンクチュアリにしてゆくゆくは市民の憩いの場にしたい、と考えているそうなんですが、ただ、宗教がやっている、というと日本では怖がる人もいますからね、だから「先生、なんとかなりませんか?」といわれたわけです。(笑)

 近年の日本の宗教団体は、増殖するお金の使い道、という点を見ると、優秀な不動産屋さんだったり、美術収集家だったりしました。でも、そんなことをしても21世紀に通用する価値を宗教はもう提示できない。やるべきは、手元にある金を使って自然を取り戻すことなんです。

 日本の神様は、自然と書いて「かみ」と読む。日本における神様とは人間を越えた価値を持つ自然なんです。ところが、その自然が至る所でいたぶられている。いわば神様がいたぶられている。自然=神様を救い、守るためには、お金で広大な土地を買い占めて開発させないで、そこをサンクチュアリに戻していくしかない。それって、ビル・ゲイツたちが財団をつくって人を救おうとしていることよりも、さらにずっと崇高だと思うんですよ。

――え、どうして?

 ビル・ゲイツたちが救おうとしているのは人間でしょう? 救った人間たちには感謝されますよね。でも、人間に感謝されるって当たり前じゃないですか。
 動物や植物のために素晴らしいサンクチュアリをつくってやっても、動物も植物もたいして感謝しないですよ。ああ、この場所、いいね、とばかりにそのサンクチュアリに棲み着いて繁殖なんかするけど、お礼は言わない。だって、動物だからね。それがいいんですよ。ビル・ゲイツをはじめアメリカ人の金持ちの財団や寄付行為が「今どき」だなと感じるのは、彼らは貧しい人たちから「ありがとう」と言ってもらいたいんですよ。あれがぼくには、彼らの幼稚さというか未熟さじゃないかと思うんですね。

――完全な「贈与」じゃなくて、「ありがとう」の見返りがほしいんですね?

中沢新一氏
中沢新一氏

 童話の『あしながおじさん』だって物語の最後には助平心を出して、俺が助けてやったんだ、と主人公の前に現れちゃうし、『オペラ座の怪人』だって最後は助平心が出てきてしまうお話です。ビル・ゲイツたちの寄付もちょっと『あしながおじさん』とか『オペラ座の怪人』に似ているところがあって、アフリカ人のところに行って、俺が寄付したんだ、俺が助けたんだ、という心が透けて見えちゃう。

 でも助ける相手が、動物だったらいくら寄付しようが金をつぎ込もうが、感謝なんかしない。これがすばらしいじゃないですか。ただただ、金をつぎ込んで守った自然で動物が喜んで生きている、それを見て純粋にこちらも喜ぶ。これでいいんですよ。そして、かつての神社やお寺や天皇御料地が大切な場所を守ったように、たぶんこうした見返りを一切求めずに金をつぎ込んで守る、というのはもともと日本人にあった感覚なんです。

エコロジーは日本的な資本主義とはそりが合わない

――お金をかけて自然を守る、と言うとなんだかエコロジーみたいに聞こえますが。

 エコロジーというのは人間中心主義が入った考え方です。ボランティアもそうだけど。日本ではボランティアやエコロジーってなかなか根づかない。つらい感じがしちゃうんですね。というのも、日本的な資本主義とそりがあわないんです。エコロジーだのボランティアだのはアメリカの偽善的資本主義とマッチした発想です。だから向こうではうまく動く。ボランティアというのは、もともと自発的という意味でしょう。それ自体が人為的じゃないかと思うわけです。

 ところが、日本における「市民」と言われる方たちの多くがこうした発想です。日本人の感覚からすると、それは「偽善的」と見える。ヒルズ族がエコロジーだのボランティアだのにそっぽを向いて居直っているのも、だからその点について言えば、分からないわけじゃない。そんな「偽善」はやりたくないな、という感覚ですね。

――ただそうなると、日本で自然を守る、というのが難しくなってしまう…。

 やっぱりどうしても「人にほめられたい」が残っているんですね。この発想をまず改めるべきだと思う。ミミズやスズメが喜ぶことをやる、そして見返りは一切求めない。そうなるべきなんです。けれどもエコロジーを唱えつつ、ミミズのほうじゃなくって、ほめてくれる人のほうを向いている。そんな人が少なくないんじゃないのかな。

――どうすればいいんでしょう?

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