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じゃがいもさま、さつまいもさま、きゃべつさま ありがとう

『じゃがいもが世界を救った』ラリー・ザッカーマン著 関口篤訳 青土社刊 2600円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2006年12月1日(金)

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『じゃがいもが世界を救った』ラリー・ザッカーマン著 関口篤訳

 いまでは、日常の食生活に欠くことのできなくなったジャガイモ。おいしいし、料理法も多様、食生活のあらゆる分野にジャガイモは進出している。

 ジャガイモの原産地は南アメリカ・アンデスの高地。西欧人(主としてスペイン人)の南アメリカ進出に伴い、奇妙な根茎を持つ植物がヨーロッパにもたらされた。ヨーロッパ人はしばらくの間、ジャガイモを無視していた。無骨な醜い(ジャガイモはその代名詞にもなっていった)塊は食べようにもどう食べていいのか分からなかった。これが16世紀から17世紀頃の話。

 かろうじて、アイルランドではこの芋が生存のための有効な食材であるとされていた。イングランドからの旅行者が、土間でジャガイモの皮を手で剥きながら食べているのを見て、いつも怖気を感じた、といった旅行記も残されている。

 確かに、貧困が蔓延するアイルランドでは、飢えをしのぐためにジャガイモは貴重な食べ物だった。1840年にアイルランドは、食物病害に襲われた。見た目は程良く育っているように見えた作物が、翌日には根がぼろぼろにされるような病害が発生した。貯蔵していた芋も一斉に真っ黒になった。アイルランドでは、食うものがなくなった。

 大飢饉と呼ばれる惨事が発生した。それに続いて大脱出(グランド・エクザイル)が始まった。多くの人々はアメリカに移民した。アイリッシュ系のアメリカ移民は、ほとんどこのときに流入したものだ。アイルランドの人口の約2~3割ほどが減少した。飢えで死んだか、移民をしたかだった。

 アンデスのジャガイモは、考古学的調査の結果、1万3千年ほど前からあった。かれらはジャガイモの見事な保存法を編み出していた。寒冷な高地でジャガイモを踏みつぶす。それが冷気で凍って、また溶けだしたところで、もう一度踏みつぶす。この過程を数度繰り返すと、ジャガイモはこちこちの乾燥板状になる。こうなったら、数年の保存に耐える。アンデス民族の生活の知恵だ。

 アイルランドのような泥炭に覆われた不毛の大地でも、ジャガイモは確実に増殖していった。多少やせた土地でも、あまり手間をかけなくてすむので、ジャガイモ食は着実に増加していった。19世紀になるとイギリスでフィッシュ・アンド・チップスが隆盛し始める。貧困階級の安手の栄養源だ。イギリスの不味いものの代表格だ。

 そして、ドイツでも。プロシアで、北東の不毛地にジャガイモが積極的に導入され、いまや、ジャガイモとドイツ人は同義とされ、悪罵では「ジャガイモ野郎」という言葉さえ生まれている。フランスではポム・フリット。これも常食だ。

 マックとチップスを常食にしている人たちで、ジャガイモを悪罵の対象にしている人はいないだろう。

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