『表現したい人のためのマンガ入門』しりあがり寿、講談社現代新書、720円(税抜き)
ずるい。
「しりあがり寿」という名前が。この福々しくて可笑しいペンネーム。一度見たら忘れられず、仕事を頼むと何となくご利益がありそうで、そして彼の作風をたった6文字で的確に表している。
マンガ家デビューから25年。これまで約70冊の本を刊行し、現在も中長編、4コマ、1コマ、イラストなどを合わせて40もの媒体に連載を持つ。うち13年間は大手ビールメーカーの宣伝部社員と二足のわらじ生活だったことを考えると、もう仕事量がハンパじゃない。
なぜ、こうも仕事の発注が絶えないんだろう。その理由のひとつにペンネームの神通力があると思うのです。もちろん、厳しいマンガの世界、肝心の作品がつまらなければ生き残れませんよ。しかし、このペンネームを含め、彼はかなり意識的に自分をプロデュースしてきた。
表現する=営業することでお金をもらうには何が大事か
じつはこの本、マンガ「家」入門にあらず。発想法のヒントや絵コンテ、コマ割りといった実践的な情報も書かれてはいる。でも、要旨は彼の実体験にもとづいた“自己プロデュースの重要性”に関する話だ。つまり、表現することでお金をもらうためには何が大切かということを「マンガ」という素材を借りて語っている本なのです。
だから、クリエーターの人も、ちょっとクリエーターっぽい人も、みんな読むといいです。「おれ、不動産会社の営業だからそういうハナシは関係ないよ」という人も読むといいです。上司に提出するレポートはもちろん、髪形やネクタイの柄、取引先でのトークの内容…。どんな職業であれ、日々自分を“表現”しているわけだから。
彼は言う。
「自分のマンガをしっかり印象づけてゆくのは、基本的には企業のCI(コーポレート・アイデンティティ)、VI(ビジュアル・アイデンティティ)のコントロールと似ているかもしれません。強く個性的で印象に残るビジュアルをくりかえし反復して露出することで、読者や世間にその作風が認知されるようになり、それが作家のブランド・アイデンティティの鍵になっていくのです」
たしかに、彼が最近一コママンガなどで多用する筆ペンの一筆書きタッチは、見た瞬間「あっ、しりあがり寿だ」とわかる。マンガ家にとっては企業名ともいえるペンネームも、ブランド戦略にとっては重要な要素ですよね。
また、自分の中には「ケダモノ」と「調教師」がいるとも言う。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




