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優秀なマネージャーは演技がうまい?
『イッセー尾形の人生コーチング』

2007年1月30日(火)

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 素人を4日間の稽古だけで舞台に立たせる。イッセー尾形と演出家の森田雄三のワークショップ「イッセー尾形のつくり方」を追いかけ、その中から引き出した「他人」と「自分」のつかみ直し方を1冊にまとめた『イッセー尾形の人生コーチング』。「演じる」という視点がビジネスの現場にどう役立つのか、世界最大の組織・人事マネジメント・コンサルティング会社、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングの日本法人社長、柴田励司氏に聞いた。(聞き手:日経ビジネスオンライン 山中 浩之)

-- 柴田さんには日経ビジネスオンラインの「Road to CEO」という企画でお話を伺い(「集団皿回し」で潰れていく日本)、非常に反響があったんですが、そこで語られたのは、部下のマネジメントに対する失望、「この人と一緒に働きたい」と思わせる人材の枯渇でした。マネージャーや現場の人を育てるプロとして、この本を読んでいかがですか。

マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング 日本法人社長 柴田励司氏
マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング 日本法人社長 柴田励司氏

 びっくりしました。僕も劇を使ったトレーニングをやっているんですよ、実は。

 マネジメントのトレーニングなどを引き受けるときに、5人前後でエチュード(即興劇)を使ったケーススタディを、最低限の設定だけ用意して。

 設定は僕が書くんですが、例えば、ある商社の人が脱サラして世田谷の閑静な住宅街でレストランを始めた。儲かってはいないけど、まあつぶれもしないというくらいの経営状態。そこには訳ありのコックとか、ウェイターが集まっている。ある日、表参道で爆発的に人気のあるレストランをプロデュースしている人間とシェフがいきなりやって来て、「この店で働かせてくれ」と言う(笑)。

-- ドラマかコミックにありそうな感じの設定ですね。

 そのレストランの店長役の人とか、ウェイターの役などがあるわけです。参加者にはそれぞれ封筒が渡されて、「あなたはウェイターの誰々です。店を次々と辞めてこれで5軒目、これで辞めたら次の就職はないと分かっている」とか、「今、新しいBMWを買ってその支払いに困っている。とにかくお金が必要」とか、「あんまりスポットライトを当ててほしくない」とか、「好きな料理だけを追究していきたい」とか、役ごとにいろいろな思いを持っていることが書いてあるんですが、それは本人にしか知らされない。

 そういう中で、全員で特定の課題について問題を解決してください、ということをやってもらう。

-- うーん、それは、レストラン経営者やそれぞれの立場から何かを学ばせる、という目的、じゃなさそうですね。その場でそのケースについての正解を出すことよりも…

有能なマネージャーは舞台でもうまい

 要は、「自分が思っている自分、そのままでやると解けない。だから、他人の目で自分を客観視して、ケースに向かって下さい。そしてそれを問題解決につなげましょう」ということを体験していただく。そして「それがリーダーなのですよ」ということに、気づいてもらうんです。

 実際皆さん、リーダーとして才覚のある人ほど、役になりきるのがうまいですよ。うまいし楽しんでやっています。どうしても自分を捨てられなくて、照れ隠ししながらやる人もいますが、それだとやはりうまくいかない。

 参加者5人が全員、自分じゃないキャラクターになりきってやっていくので、まったく想定していない、不思議なことがいろいろ起きるわけです。これがまた刺激的。表参道のやつは、高飛車で、ホリエモンみたいなキャラクターのような印象を持ちそうなところなんですが、会ってみると、実はすごくいいやつだったり、そうすると「どうしよう、断るの悪いね」みたいな話になって。

-- ああ、数字や合理性だけではない部分が出てくるんですね。

 そう、経済合理性やロジックだけでなく、いろいろな感情が出てくる。それを考えに入れながら、実際に彼らを受け入れるのか、受け入れないのかということを議論することになるんです。そのプロセスを、後で全員で共有する。

-- 役とか、筋立てみたいなものは柴田さんがお考えになるんですか。

 そうです。どんな役かはトランプを引くみたいに決めるので、誰がどれということは分からない。で、1日でそれを2回やるんですね、違うストーリーで。

-- どんな印象を持たれるんですか、それに参加された方って。

「自分」を離れるカタルシス

 すっきりするみたいです。自分じゃない人になりきって、少しカタルシスというか。起承転結を経ると何かすっきりするんですね。

 森田さんが同じことをお考えかどうか分かりません。けれど、勝手に「似ているな」と思ったのは、そもそも「『自分』は、いろいろなものを背負っているんだな」ということ。だから、例えば会社組織の中でいろいろ発言すると、それがどう展開していくか、について、必要以上に気にしたりすると思うんですよ。

 ところがその「役」を演じているということだと、そういう背負っているものが何もないというか、気楽なわけですよね。だからすごく素の状態で行動することができる。それでいて何か一様のプロセスを経て、結論を出すというプロセスを経ると、気持ちがすっきりするんじゃないかと思うんですね。ああ、やりたいようにやって結果が出た、と。ビジネスの世界でも、この方法は有効じゃないでしょうか。

-- ということは、演技って、ビジネスの実際にも必要なんでしょうか。

 必要ですね。「イッセー尾形さんはお芝居の方で、ビジネスとは関係ないね」と思っちゃう人がいるかもしれないけど、でもそうじゃないんですよね。

 例えば、現場のリーダーの人たちを集めてこのワークショップをやったらどうなるでしょうかね。僕は、結構うまいんじゃないかと思います。

 リーダーの人たちって、周りの人々を見回して、誰か困っている人はいないか、この人はどういう特徴や癖を持っているのか、を見抜いて、1日のうちに怒ったり、泣いたり、笑ったりということを次々にやらないといけない。そのためには、周囲を観察し、自分を客観視しているはずです。それは、この本に書かれている「芝居」や「演技」のお話と、通じていると思います。イッセーさんや森田さんがどうお考えかはもちろん分かりませんが。

「演技」は頭で理解できるもの?

-- 「演技」「演じる」という言葉には、ネガティブなものも感じます。なんか本気でやってないんじゃないか、みたいな。

 それ、違いますよ。演じるというか、そのものになっちゃうことですよね。演劇の世界には「常に自分と別の存在を置いたままやれ」という考え方もあるけれど、そういうのとはちょっと違う。じゃあ「役と自分を同一視してやれ」ってことかというと、それとも違う気がする。

 ビジネスの世界で「仕事をしている自分」と、「そうでない自分」というのは、常にあると思うんですよ。言い換えれば、冷静さみたいなところが絶えずある。でも、意図的に演じているという嫌らしさはないですよね。何と言ったらいいのかちょっと難しいんですけど。

-- 「演技」って言われると、スキルというか、頭で理解できることのような気がしますよね、理屈で分かること、というか。

※「イッセー尾形の人生コーチング」の、日経ビジネスオンライン連載はこちらで立ち読みしていただけます。

コメント1件コメント/レビュー

>不思議なもので、「人の顔が見えない人」っているんですよね。世の中にはアスペルガー症候群と言われる方々がそこそこの比率でいるとされています。私もマネジメントをやる中で、これに該当するのではないかと推測する方々を身近で数名見てきて、悩まされてきました。この分野がもっと研究されていくとよりいろいろわかってくることがあるのではないかと思っております。(2007/01/30)

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「優秀なマネージャーは演技がうまい?
『イッセー尾形の人生コーチング』」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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>不思議なもので、「人の顔が見えない人」っているんですよね。世の中にはアスペルガー症候群と言われる方々がそこそこの比率でいるとされています。私もマネジメントをやる中で、これに該当するのではないかと推測する方々を身近で数名見てきて、悩まされてきました。この分野がもっと研究されていくとよりいろいろわかってくることがあるのではないかと思っております。(2007/01/30)

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三品 和広 神戸大学教授