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寅彦、三島、安吾、それぞれの時代の文豪たち

『寅彦と冬彦 私のなかの寺田寅彦』 池内了編 岩波書店刊 2100円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2007年1月26日(金)

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『寅彦と冬彦 私のなかの寺田寅彦』 池内了編

 寅彦と冬彦は、同一人物。寅彦は言うまでもなく寺田寅彦のこと。一方冬彦は名随筆家吉村冬彦のことだ。科学的な文は寺田寅彦名で、一方文芸的な随筆は冬彦名で発表された。寺彦は東京帝大教授だったから、文芸的な作品を寺彦名で出すのを遠慮し、吉村冬彦名を使った。

 寺彦は夏目漱石の弟子だったから、一般向けの科学書も、文芸的随筆も文章の巧みさで光っている。

 「天災は忘れたころにやってくる」
という警句は、今でも立派に生きている。

 「茶碗の湯」という一文では、ちゃぶ台に載った茶碗から立ち上る蒸気と、雨後の土から立ちのぼる蒸気とが同じことを、みずから土に顔をつけて観察する。そしてその蒸気が上昇して雲になり、気温の関係で渦を巻くような荒天をもたらす。

 一杯の茶碗の湯のミクロな観察から、台風や竜巻などのマクロな事象まで説明しきる。

 1本のロウソクの燃焼から、話を説き起こしたファラデーを思わせる。

 本書は寺田寅彦の業績を称える、人たちの賛歌のアンソロジー。

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『三島由紀夫の現場 金閣寺、豊穣の海から市ヶ谷事件現場まで』 宮崎正弘著

『三島由紀夫の現場 金閣寺、豊穣の海から市ヶ谷事件現場まで』 宮崎正弘著 並木書房刊 1700円(税抜き)

 昭和時代のもっともスキャンダラスな作家、三島由紀夫。
 ノーベル文学賞にもっとも近かった作家とも言われた。

 若き三島は、芯から「ギリシャ狂い」だった。

 ギリシャ、ローマ、ニューヨーク、パリと世界を旅して回った。三島は思われているほど、国粋主義的ではない。

 戦前の日独伊三国同盟にしても、
「ヒトラーとではなく、ゲルマンの森と、ムソリーニとではなく、ローマのパンテオンと、さらに日本の古事記との同盟と思えばよい」
 と記すほど、国際的な感性に溢れていた。

 作家の人生の後半、国粋的な言辞を弄し、ついに割腹に間で至らしめたものは何なのだろうか。

 宮崎は、三島の初期作品から、『豊穣の海』に至るまで、現場を丹念に辿っていく。

 このような作家研究の方法はいつでも成功するとは限らないのだが、本書においては、三島文学の深淵をのぞき見た気持ちにさせてくれる。

 それは三島の、矛盾と不条理の深淵といってもいい。

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