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「パラダイム」の故郷、 『科学革命の構造』
~常套句に込められた意外な意味

  • 漆原 次郎

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2007年2月14日(水)

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 「オンデマンド」は「注文対応」、「アウトソーシング」は「外部委託」。外国語由来のカタカナ語を日本語に言い換える試みが、一時期、話題となった。国の機関が3年を費やして、外来語176個の和式の呼び方を考えたのだ。ほほう、けっこう言い換えられるものだと感じた記憶がある。

 そのリストには載っていなかったが、よく耳にする言葉がある。「パラダイム」だ。

自分の言葉で説明できる?

『科学革命の構造』 トーマス・クーン著 中山茂訳 みすず書房 2600円(税抜き)

『科学革命の構造』 トーマス・クーン著 中山茂訳 みすず書房 2600円(税抜き)

 とかく経済をリードするお偉方は「パラダイム」を口にする。“勝ち組代表”の経営者は「ブランドマーケティングのパラダイムシフトが3年以内に起きる」と、「パラダイム」の変化を予測する。“ミスター円”こと経済学者は「世界経済のパラダイムシフトを、政治、安全保障の面からも考えないと」と、新しい「パラダイム」の社会的影響を示唆している。

 日頃あなたも使っているかもしれない「パラダイム」。でも、意味を明解にせよと問われたなら、これがけっこう難しい。

 評者も頭を抱えて、この言葉を生んだ本を読み直してみた。科学哲学者トーマス・クーンが1962年に上梓した『科学革命の構造』が、「パラダイム」生誕の地だ。書名の示す通り、もともとは科学の世界で使うための言葉だった。

 本書中で最初に出てくる「パラダイム」の説明は次の通り。

「一般に認められた科学的業績で、一時期の間、専門家に対して問いや答え方のモデルを与えるもの」

 うーん。分かったような、分からないような…。ほかにもいろいろな説明がされているが、「パズル」を使った表現は分かりやすいかも。次のように解釈できる。

 ジグソーパズルを思い浮かべてほしい。何も描かれていない200ピースよりも、お城の絵だと分かっている2000ピースのほうが、作業は進むし、熱中もできる。そう、「パラダイム」とは、ジグソーパズルの「お城の絵」のようなもの。科学者たちは、お城の絵になると分かっているから安心して、ボクは窓の辺りをはめますからね、ワタシはお堀の周りをはめますよと、せっせか研究を進められる。こうして「パラダイム」が存在するおかげで、その時代その分野の科学体系は確固たるものになっていくのだ。

 クーンの説明はさらに続く。

 「通常科学」と呼ばれる平和な世界のもと、科学者たちの研究はたんたんと進む。ところがある日、説明のつかない「変則性」を誰かが見つける。しばしば無視される場合もあるが、多くの科学者が「やっぱり、どう考えてもおかしいよね」と言いだすと、「革命」に突入し、混乱が訪れる。そして、より多くの支持を受ける新理論が出されることで混乱は収拾される。これが、「パラダイムシフト」と呼ばれるものである。

 クーンに言わせれば、パラダイムシフトは、文学、音楽、芸術、政治、人間活動では当たり前に語られてきた事象。本人としては、客観性がすべてと思われていた科学の世界に人間活動的要素を取り入れたユニークさを褒めてほしかったようだ。

 だが、「パラダイム」という言葉は、クーンの手から離れると、一人歩きをはじめた。

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