「著者に聞く」

著者に聞く

2007年2月23日(金)

ライトノベルを買う大人は恥ずかしいか?
〜有川浩『図書館戦争』シリーズ

【インタビュー番外編】

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シリーズ最新刊『図書館危機』。市街戦も陰謀もラブコメもいよいよ佳境(有川浩著、メディアワークス、税抜き1600円)

シリーズ最新刊『図書館戦争』。市街戦も陰謀もラブコメもいよいよ佳境(有川浩著、メディアワークス、税抜き1600円)

有川 さっき「きっと」堂上は辛いんですよ、とか言っちゃいましたが、私の場合、キャラクターが、「他人」なんですよ。

−− どういうことでしょう。

有川 自分が書いているキャラクターですが、他人だと思っているんですよね。例えば、初めて会った人が、全部を教えてくれるわけがないじゃないですか。それが書いているうちにちょっとずつ分かってきたりとかする。私は脳の内蔵されたカメラで、キャラクターたちを勝手に撮ってるんですよ。そしてこのカメラはキャラクターへの同調機能もついてるので、キャラクターの語りたいことをキャッチしたらそれも勝手に拾っちゃう。

 そしてカメラの立場から見ると、(主人公の)笠原みたいに最初から開けっぴろげで分かりやすい子もいるし、心中隠して、なかなか見せようとしないのもいる。それなのにいきなり、私が思ってもみなかったことを、いきなり白状したりするヤツとかが、たまにいまして…。

他人だから、思いもかけない行動に出る

−− それは面白い。

有川 たまにいるんです。手塚とか、すごく困ります。

−− 手塚は笠原の同僚で優等生のライバルという位置づけの登場人物ですね。彼は突然「実は僕はこういうヤツで」と、ブレークしたわけですか。

有川 うん、「あ、そうなの。君がそんなにかたくななのは、そういう家庭事情があったからなの」って。「でもお姉ちゃん、そうすると、今からキミ(手塚)の兄というキャラクターを作らなきゃいけないよ。それは最初に言っといてほしかったな」みたいな(笑)。

−− それで兄貴が出てきたんだ。

有川 本当に行き当たりばったり。物語も、大雑把な出発点と着地点しか決められなくて。例えば出発点は九州のどこかから。交通手段も資金もルートも、途中で誰と合流するかも、あなたたちの勝手です。ゴールは北海道なので、北海道のどこかにたどり着いてください、という感じ。

−− 途中で富士山に登っているかもしれないし。ロードムービーのようですね。

有川 そうです、そうです。信州でソバ食って行こうよ、みたいな。そんなこともあり得る。

波多野 そうすると、4冊構成というのは、最初の段階から考えていたんですか、と聞いてみたくなります。

有川 いえ。私の中では3冊で畳む予定だったんですよね。担当さんが「もう1冊やってみない?」と言ってくださって。私は2巻の段階で「さあ、次で畳むぞ」という気持ちだったので、そう言われたら、どこからネタを拾ってくればいいのか(笑)。

−− 3巻の盛り上げ方からすると、もう最初から4冊があったかのような印象ですが。

有川 最初からあったかのように見えていたら、光栄です。

ミリタリー好きは、お父さんの影響?

−− ところで、有川さんを前にこんなぶっちゃけたお話で恐縮ですが、飛行機とか、軍艦とか、銃器でもいいんですけど、こういうものが好きなのは普通、男の子だろう、という……何ていうんですかね。

有川 それは「思い込み」です。

−− はい……思い込みですね。その通り、はっきり思い込みなんですけれども、それでも男性としては「僕の好きなこういう、軍艦とか飛行機とかそういうのを、女性のあなたが好きでいてくれるの?」と、うれしくって驚きつつ、やっぱり信じられない、みたいなところが。

波多野 えー、そう? 私も好きだけど。

有川 意外といますよ、女性でも。私の場合は、遡れば、新谷かおるさんのマンガ作品。女の人でもハマりますよ。

−− そうだ「エリア88」だ。そういえばうちのかみさんもハマってた。

有川 私は「ファントム無頼」とかを見て、「うぉ、格好いい!」とか思って。

−− かみさんが変わっているんだと思っていたんですが、けっこうそういう女性もいらっしゃるわけですね。

有川 多いですよ。それで私は、そのまま戦闘機とかに興味を持ったんです。あとは、うちの父。おやじ推奨映画というのが「眼下の敵」だったんですね。

※注:  「眼下の敵」1957年。 米・西独共同制作映画。 監督:ディック・パウエル、原作:D・A・レイナー。 米国の駆逐艦とドイツUボートが互いの心中を読み合って激戦を繰り広げる戦争映画の傑作。『海の底』でヒロインの望が、立て籠もった潜水艦の中でこのビデオを見るエピソードが書かれている

有川 父も漫画読みだったものですから。「ビッグコミック」なんかが、定期的に家に運ばれてくるわけですよ。その中に浦沢直樹さんの『パイナップルARMY』とかが連載されていて、またこれが格好いいんだ、とか。

−− なるほど。

有川 たまたま、少女漫画にいく時期に、少女漫画も好きだけど、横にもちょっと滑ったかな、という。そんな感じで、軍事物も好きという人は結構多いような気がしますね。ただ、男の子はたぶんメカ好きが多いと思うんですけど、女の人の場合は、その状況の中のドラマが好きという人の方が多いような感覚なんですね。

 それはたぶん女の人の方が、キャラクターとか、物語とかに感情移入をするからなんですよね。同じ軍事物好きでも、例えば、私が一番泣いた映画は「シルミド」だったんです。

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著者プロフィール

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集などを経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長

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