• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

ビジネスの言葉が『下流志向』を生む
~教育を、仕事を、値切ってませんか

2007年3月7日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 教育が大変だ、と多くの人が感じる時代だ。学力低下、ニート、不登校、いじめ等々、課題は枚挙にいとまがない。

『下流志向──学ばない子供たち、働かない若者たち』内田 樹 講談社、1400円 (税抜き)

『下流志向──学ばない子供たち、働かない若者たち』内田 樹著、 講談社、1400円 (税抜き)

 もう1つ、近年気になるのが、社会的格差の問題。書店でも目に入るのは、「下流」だ「負け組」だと、陰鬱な活字ばかり。本書『下流志向』も、あまり景気のいいタイトルとはいえない。

 しかし、ちょっと待ってほしい。著者の内田樹さんをご存じだろうか。

 いわずと知れた2000年代の超売れっ子であり、フランス現代思想を専門とする元祖・大学教授ブロガー(?)である。そんなウチダ先生による待望の「教育」本が、面白くないわけがない。しかも経営者セミナーでの講演がもとになっているので、昨今の教育問題をビジネスマンの視点から手早く理解するには、格好の1冊だ。

 ウチダ先生がまず着目するのが、子供は勉強を、若者は労働を、自らの「意志」によって避けているという点である。それは「逃走」というより、積極的な「自己決定」だとさえいえるほどに。

 そこから、サブタイトルの「学ばない子供たち」と「働かない若者たち」には、共通の根があるという論につながっていくのだが、ではそもそも、こうした子供や若者が生まれた背景とは何だろうか。

「将来の役に立つ」が、教育崩壊の最大の原因

 具体例から見てみよう。

 「どうして勉強しなきゃいけないの?」――例えば、このように子供に問われたら、あなたは何と答えるだろうか。

 典型的には、勉強すると「いい大学」に入れて、「いい就職」「いい結婚」ができる。だから、勉強はつらいけれど、きっと将来の「役に立つ」んだよ…。といったところだろうか。

 ところが、そうした考え方は、教育崩壊の原因そのものを示しているとウチダ先生はいう。

 では、「自分のやりたいことをやるため」というのはどうだろう。こちらも残念ながら、ニートにつながる心性といわれる。では結局、「何のために勉強するのか?」

 「その問いには答えられない」というのがウチダ先生の答えだ。

 考えてみてほしい。小学1年生に「ひらがなを学ぶ意味」を正確に説明できるだろうか。

 ひらがなを学習することの意味は、それを自由に使いこなせるようになってからでないと、理解できないのではないか。

「学校教育の場で子供たちに示されるもののかなりの部分は、子供たちにはその意味や有用性がまだよくわからないものです。(中略)それらのものが何の役に立つのかをまだ知らず、自分の手持ちの度量衡では、それらがどんな価値を持つのか計量できないという事実こそ、彼らが学校に行かなければならない当の理由だからです。」

 学校教育とはいってみれば、まだ手にしていないモノサシの存在を示し、それを子供に入手させる作業だ。新しいモノサシがどう「役立つ」のかは、その使い方を習得するまでは、わからない。30センチのモノサシしか持っていない子供には、そのサイズを超える長さを、あるいは重さや温度を計測することはできないのだから。

消費者として訓練された子供たちはどう考えるか

 なるほど、社会人として働いている現在のあなたのことは、就職活動の頃の自分のモノサシで測ることはできないだろう。仕事をして初めてわかることは多いし、当初の思惑とは異なる形の充実感もあるはずだ。

 けれども、昨今の子供たちは、このようには考えない。それは、消費社会が日本のすみずみにまで浸透し、子供までもが教育を「ビジネス」の言葉で語るようになってしまったからだとウチダ先生はいう。

コメント5件コメント/レビュー

「けんかの勝ち方教えます」「けんか力3ヶ月で20%UP」とかの商業広告が踊る中、巷にはけんか塾の授業料が高く「我が子は強くなれない」との怨嗟の声が飛びかう。政府も流行に乗り「けんか力格差を無くす」と言い出す始末。これが果たして「道」の世界に連れて行けるか否か? この現象は教育哲学者の怠慢からか? ともかく、この世情をぶっ飛ばす一冊を待ち望んでいる者です。哲学に答えは無いが、あとは読んでからに。(2007/03/17)

「超ビジネス書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「けんかの勝ち方教えます」「けんか力3ヶ月で20%UP」とかの商業広告が踊る中、巷にはけんか塾の授業料が高く「我が子は強くなれない」との怨嗟の声が飛びかう。政府も流行に乗り「けんか力格差を無くす」と言い出す始末。これが果たして「道」の世界に連れて行けるか否か? この現象は教育哲学者の怠慢からか? ともかく、この世情をぶっ飛ばす一冊を待ち望んでいる者です。哲学に答えは無いが、あとは読んでからに。(2007/03/17)

下司先生と同じく教育哲学を学ぶ立場から一言。消費者的視点そのものは決して悪くないと思います。それどころか、これまでの教育哲学は、「教育が何の役に立つのか?」という疑問に、損得を真剣に計算する賢い“消費者”を納得させられるほど、真正面から答えることができていなかった点こそ問題だと考えています。実際、「終わってみるまではわからない」ものでも、資本主義社会では飛ぶように売れているものがあります。例えば、ダイエットものしかり、英会話学校しかり、アウトドアものしかり、です。なぜ教育はそれほど“消費者”に見放されているのでしょうか?もし本当に教育に「終わってみたらわかる」価値があるのだとしたら、それを言葉にして紡ぎ出し、一般の人にも分かる形で提示するのが教育哲学の役割ではないのでしょうか。(2007/03/07)

内田先生の説には一理ありますが、では東大を頂点とした難関大学、それを受験するための難関高校などが、依然として存在してるのは何故でしょうか。こうしたセンセーショナルなタイトルの本はどこか「売らんかな」精神の臭いが漂っています。勉強しない子供は全体の何割なのか、ニートが同世代の若者の何割なのか、その事がいまいち明確になっていないので、疑り深い私には社会的に取り上げる程でもないことを針小棒大に騒いで世間の耳目を集めたがっているようにも感じるのです。(2007/03/07)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授