「社長の本棚」

収入の半分は本に消えた
〜インスパイア 成毛眞社長(後編)

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2007年3月8日(木)

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 小中高と本ばかり読んできた成毛氏が、初めて本から遠ざかったのが大学生時代だったという。「一切本を読むのをやめて、麻雀とディスコに遊び狂っていた」という東京生活のなかでも、なぜか古本屋の100円均一本巡りだけは続けていた。

 ふたたび、本を手に取るようになるのは、社会人になってからだった。話が社会人時代に及ぶと、それまで黙って座っていた夫人が「収入の半分は本代で消えていた」と笑いながら口を挟んだ。

 以後、本を片時も離さない日々が続いている。「活字を持たない状態で5分もいると、不安どころか何をしていいかわからない」と語る。今では正真正銘の活字中毒者だ。

成毛眞 インスパイア社長

 あらゆる場所で読んでいますね。風呂以外は常に読んでいるんじゃないですか。飯食いながらでも読んでいるもんね、いまでも。トイレに行くときでも、チラシでも何でも字が書いてあるものは持っていくし。

 行き帰りのタクシーのなかでもずっと読んでいますよ。行き帰りタクシーにしているのも、本を読むためです。電車の乗り換えで読書を寸断されるぐらいだったら、5000円払って本を読んでいる時間を1時間取った方が得じゃないですか。毎日5000円、年間200日通勤するとして、たかだか100万円。時間だと、400時間か。400時間も本を読めば、200万円稼ぐのはそんなに難しくないと思うんだけど、みんなやらないんだよね。

 同時並行で、いつも10冊以上は読んでいますね。いまは枕元に2冊、会社に3冊ぐらい、かばんのなかにたぶん3冊でしょう。本を買うのは全部ネットです。1回に20冊とか買うから、単純でいいですよ。

 ほとんどの本を、途中でやめますよ。月に50冊見るなかで、読み通すのは10冊もないかな。面白くない本を読んでいる暇はないから。文章が下手だと、結構やめちゃいますね。あと、資料性の高い本って意外と読まないんです。目次と気に入ったところだけを、2〜3ページ読んでしまい込むという本が結構ありますよ。

 読んだ本の整理もやらない。あれは、本を読まない暇な人がやることでしょ。そんな暇があれば、本を読むのが本読みというもので。


 では、寸暇を惜しんで成毛氏が読んでいる本とは、いったいどういうものなのだろうか。目下注目しているジャンルを聞いてみると、「沈没もの」という謎の答えが返ってきた。

 突っ込んで訊ねてみると、なんでも「古今東西の沈没船の話をテーマにしたノンフィクション」とのこと。この“沈没もの”は「本屋や出版社がその気になればジャンルとして成立する」という。「面白くて仕方がない」という話しぶりに引き込まれ、いつのまにか当の本を読んでみたい気にさせられていた。

 近現代の“沈没もの”はものすごく面白いですよ。有名なのが、タイタニックが、実は保険金目当てで意図的に沈没させられたという説。それ以外にも、沈没にまつわる話は、ジャンルで語れるくらいいろいろあるんです。本だけじゃなくてテレビも一緒に展開すれば、“沈没もの”はメディアミックスで結構なご商売になると思うな。

 あとはいま、テーマ的に面白いのが海底の地質調査船の話。アメリカには「グローマー・エクスプローラー」、日本では「ちきゅう」という地球深部探査船があるんですが、そうした探査から生まれる考古学や地球物理学のテーマはこれから絶対に出てくると思う。

 たとえば、『ノアの洪水』(ウィリアム・ライアン、ウォルター・ピットマン)という、紀元前に起きた黒海洪水説を書いた本があるんです。地球温暖化で海水がボスボラス海峡から溢れ、大量に黒海に流れ込んだという。その頃黒海沿岸では農耕が盛んだったから、場所によっては半分ぐらいの人が逃げ遅れて死んだと。当然、家畜や船を持っているやつがいたわけで、家畜を載せて船で逃げている。だからもろにノアの箱舟はあったんだよね。そうしたことが、海洋地質調査からわかるわけですよ。

 考古学を含めた理学系は、実はこの10年ぐらいでものすごく進んでいるんです。雑誌、テレビ系のメディアがまったく伝えていなくて、書籍しかない。だから、1つのテーマを面白いと思ったら、その周辺を一気に読みます。


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著者プロフィール

澁川 祐子(しぶかわ・ゆうこ)

フリーの物書き。1974年、神奈川県生まれの東京郊外育ち。ビジネスからサブカルま で幅広く執筆。書評サイト「review-japan」編集部員。最近は、本と の出会いの場「グラデーションブックス」の起ち上げに奔走。



このコラムについて

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社長の本棚――。そこには通常のインタビューからだけでは伺い知れない、社長の素顔が隠れている。幼少時代の愛読書、人生を変えた1冊、経営者としてのバイブル本、意外な趣味の書…、ふだんはなかなか覗くことのできないあの社長の本棚をこっそり拝見!

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