• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

iTunesで第1位
革命児ナクソスの秘密

  • 林田 直樹

バックナンバー

2007年3月16日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 クラシック音楽といえば一昔前までは、カラヤンやバーンスタインといった大指揮者、ポリーニやアルゲリッチといった名演奏家が、その代名詞的存在であった。音楽評論家の権威付けも手伝って、売れるCDイコール名演奏家の名演という時代が長く続いてきた。こうした名演奏家を抱える音楽会社は、ドイツ・グラモフォンをはじめとするいくつかの老舗レーベルと決まっており、そのブランド価値は永久に揺るがないものと思われていた。

 しかし、こうした構図は今、クラシック音楽でも徐々に拡大しつつあるネットを利用した音楽配信の普及で変わろうとしている。ネット配信市場で影響力を持つのは、旧来からのメジャーレーベルではなく、1990年代から急速に成長してきた「ナクソス」という新興レーベルである。

 音楽配信サービスで影響力のあるアップルの「iTunes Store」の日本サイトで発表されているデータを見るとその様子が分かる。2006年1月1日~11月30日の累計ダウンロードランキング「iTunes BEST of 2006」では、ナクソスの「ザ・ベスト・オブ・モーツァルト」は、J-POPなどの有力タイトルを抑え、総合ベストセラー・アルバムの第1位に付けている。

 昨年は人気アニメ「のだめカンタービレ」のヒットやモーツァルト生誕250年、といった日本のクラシック音楽界には追い風が吹いたことは確か。とはいえ、iTunesの利用者がクラシック音楽ファンに偏っているとは考えにくい。さらにナクソスには、人気演奏家の作品はほとんど存在しない。それなのに、ダウンロード数が多かったのは、なぜだろうか。

演奏家中心主義から作品中心主義へ

 ナクソスの創立は1987年。ドイツ出身で香港在住の音楽愛好家クラウス・ハイマンが興した。いわば家族経営の小さなレコード会社で、それは今も基本的に変わらない。87年といえばまだカラヤンが生きていた頃であり、老舗レーベルに所属する名演奏家こそ最高のブランド、という常識を誰もが疑わなかった時代である。ところがハイマンは、新しいレーベルを興すに当たり、この常識とは真っ向から対立するコンセプトを根底に据えてスタートした。

 そのコンセプトを一言で言うなら、「演奏家中心主義から作品中心主義への転換」である。従来のクラシックレーベルの戦略は常に「次のドル箱演奏家の発掘」であったが、ハイマンは1人の愛好家の立場から、そうした状況に常に不満を感じていた。

 同じような名曲が、異なった演奏家によって繰り返し録音されるのではなく、もっと違ったいろんな作品をたくさん聴いてみたい。それも、できるだけ安い価格で――。この気持ちを原点に、ハイマンは1つの目標を胸に抱くことになる。それは、1つのレーベルだけで、広範なクラシック音楽を体系的に網羅した、膨大な作品カタログを作ってしまうという遠大な夢である。

レコード会社が録音したい曲を録音する

 ハイマンの夢を実現するには、クラシック音楽につきものの高コスト体質を打破することが何より必要であった。かといって、安かろう、悪かろうでは話にならない。そこでハイマンは、価格と質の双方で妥協しないために、無名でも質の高い演奏をする演奏家を大胆に起用した。

 しかし、あくまで主人公は作品である。ハイマンは「演奏家の録音したい曲をレコード会社が録音するのではなく、レコード会社が録音したい曲を、演奏家が演奏するのだ」という断固たる考えを持っていた。演奏家のイメージ作りなどは一切せず、黙々と安くて質の高いものを作り続けたのである。いわば「無印良品」の発想であった。

 ハイマンがしたたかだったのは、そうやって急ピッチで続けられるたくさんの録音の契約に関して、常に全権利をナクソスのものとする形を取ったことである。ハイマンには将来のナクソスが保有する膨大な作品コレクションが見えていた。そうなった時、アーカイブ全体でビジネスできるよう、最初からビジョンを持った姿勢で録音を積み重ねていったのである。

 こうした地道な努力の甲斐あって、ナクソスの姿勢はまず英国で成功し、BBCラジオ第3放送で専門家の絶賛を受けたことで火がついた。それは瞬く間に世界に広がり、1995年第1四半期ではイギリス市場でトップに躍り出る。それを追うようにして、日本の消費者からも熱い支持を得るに至った。 97年にはカンヌMIDEM(国際音楽著作権見本市)でザ・ベスト・レーベル・オブ・ザ・イヤーを受賞、これは廉価盤としては空前のことであった。いまや日本のクラシック・ファンでナクソスの名を知らぬ者はいない。

コメント0

「音楽脳を刺激しよう」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授