(第1回から読む)
山城: 当たり前の話なんですが、2002年のワールドカップって、日本のサッカーにとって非常に大きかった。そこで、この図(下図)を見ながらお話ししたいんですが。

4年サイクルでこの図のように人の流れが起こって、サッカーのファンが増え、市場が広がる、という図式です。
ワールドカップのたびに、広義のスポーツファンがサッカーに感化されて、まず日本代表ファンになる。大会終了後はそれを母集団として、海外サッカーに興味を持てば海外サッカーファンへ、国内サッカーならJリーグファンになる、という考え方なんですが……。
この図式、2002年で終わっていると思うんですよ。これ自体が「2002年型モデル」という古いモデルなのではないか、と。それを踏まえたうえで、じゃあ2006年までの4年間に何が起こったのか、また今後どうなるのかを考えていきたい。
山田氏: 広義のスポーツファンが、2002年のワールドカップの時ほどサッカーに感化された時期はなかったと思います。衝撃的なサッカーへの感化の爆発だった。あれは異常な事例だったのです。
あの時、大部分のスポーツファンが流入してしまったので、マスのスポーツファンが、日本代表やワールドカップでサッカーの楽しみ、というものに大して、あれ以上の衝撃を受けるということはもうないでしょう。あれほどのインパクトのあるイベントはもう来ないわけですよ。だから「広義のスポーツファン」から「日本代表ファン」への流入というのは、今後は減少してゆくでしょう。
―― つまり、広義のスポーツファンと日本代表ファンが同化してしまって…。
同化まではいかないにしても、感化されたことがない人がいなくなった。1回感染したんですね。感染が終わっちゃって、免疫ができている。
―― もう2度目が利かない、と。
まだ免疫がないのは若年層だけですね。物心ついてから初めてサッカー日本代表というチームに触れる効果はあるかと思います。ただ、ほとんどの人は免疫があるから、2010年になった時、あるいは今後も…ああ、また日本代表やっているねと。次回も「ああ、また」、という繰り返しにしかならない。なぜなら、自国開催のワールドカップより強い刺激というのは有り得ないですよ。次にあれほどの刺激があるとすれば、それこそベスト4まで進出するとか、そのぐらいしかないでしょう。
2006年大会でマスコミが“暴走”した背景
―― だからこそ2006年大会では、マスコミが中心になってあれだけ高い目標、極端な例だと「優勝するぞ!」なんて書くところもあったり、ベスト4とかベスト8が目標だ、なんていう高い目標を立てるメディアもあった。
マスコミは、それが意識的か無意識かは分かりませんが、「2002年型モデル」を2006年まで延命させるために、今大会ではそういう高い目標を掲げざるを得なかったんじゃないかと。煽らざるを得なかったということなんでしょうか。
そうだと思いますね。
―― つまり「2006年大会には、(2002年より)もっと強い刺激があるんだ」ということを喧伝しないと、この図のモデルによる市場拡大は起こらない、と。でも、実はそこに確信を持っていたというか、信じていたのは、マスのスポーツファンじゃなくて、マスコミの側だけだったんじゃないのかなと思うんです。で、大会があの結果(予選リーグ敗退)で。そうなることは分かっていたのに。
―― 今回の2002年から2006年までの4年間は「欲しがりません、勝つまでは」と、マスコミが走ってしまって…そしてこのモデルが崩壊したことが露呈してしまった、と。
ただ、マスコミがそちらの方向に走っている間に、ファンの間でも別の変化が起こっていたと思うんです。それは、ファン層、この図で説明するとこの3つの円の間の関係性が大きく変わってしまったと思うんです。端的に言えばそれぞれの間に「壁」が立ってしまって、人の行き来が無くなってしまった。
「代表」「J」「海外」の間にできた壁
代表ファンとJリーグのファンの間に、ですか?
―― そう感じるんです。それだけじゃなくて、海外サッカーと代表、Jリーグの間にも壁が立って、相互に流入も流出も起こりにくくなっている。
サッカー雑誌の現場で読者の反応を見ていると、例えばJリーグのファンにとっては日本代表の記事は嫌悪すべきもので、海外の記事も、それが日本人選手がいるチームの記事であっても「邪魔だ」という空気がある。それぞれに「タコツボ化」しているんですよね。
でも、これって自然現象じゃない気がするんです。自然にそれが起こったというのは、あまりにもそれはマスコミとして無責任かなと思っていて。何かの原因があったんじゃないかと思うんです。
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