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わび、さび、幽玄の世界を伝える

『千利休は無言の前衛』赤瀬川原平著 岩波新書 780円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2007年3月23日(金)

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『千利休 無言の前衛』

 様々な芸術分野に才能を持つ筆者が、映画『利休』のシナリオを書くために書き上げた本。千利休をテーマにした本は無数にあるが、そんな中でも抜群に面白い。

 茶室には主人が待ち構える室内に入る「躙り口」がある。小さな小さな入り口だ。誰でも身をかがめて小さくからだを縮めないと入れない。

 客が誰であろうと、主人より身を小さくする。この作法は、茶室では身分の差はないということを前もって、客に知らしめる。

 茶道は「道」という字が示すとおり、極めるべき道。華道、書道、香道、みなしかり。日本人は何でも「道」にしてしまう。たかが茶を飲むことを「道」にしてしまう。

 茶なんか誰でも毎日飲むものだ。そのときの行動を振り返ってみる。台所で湯を沸かす。湯が沸く間に茶碗や急須を用意する。急須に茶の葉を適当に入れる。湯が沸騰したら、茶碗に注いで少し熱を取る。ちょっと沸点より下がった湯を茶碗から急須に移す。急須にふたをして、しばらく茶の香りを湯に移す。急須から茶碗に注ぐ。

 台所の茶にはこのような一連の動作がある。この動作は時を経て、次第に合理化され、単純化していく。しかし、動作は繰り返される。ほら、これこそが茶道だ、と赤瀬川は言う。

 いま、茶道教室で教えている茶道は、いつの間にか形骸化していて、生きているところがない。千利休が唱えた茶道から大きく乖離している。一人ひとりにその人自身の茶道があるはずだ。利休はそれが異端的に見えても拒まなかった。

 秀吉は金の茶室、純金の茶碗を作り、そこで利休に利休の茶道を演じさせようとした。いきなり金の茶室や金の茶碗を当てがわれても、利休はうろたえない。

 秀吉は諸々については前衛だった。だからこそ天下の太閤に上り詰められた。利休は茶道において前衛だった。その思想は太閤を遙かにしのいで「前衛」だった。前衛対前衛という思想の張り合いでは秀吉は利休にかなうはずもなかった。

 だから、秀吉は利休に切腹を命じたのだ。

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