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手間をかける! 『闘う純米酒』はかく勝てり

水、米に恵まれない土地で旨い酒がつくれるワケ

  • 松田 尚之

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2007年4月11日(水)

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 ビジネスで成功するには、2つの考え方がある。1つは、時代の流れにうまく乗ること。もう1つが、時代の流れにあえて逆らうことだ。

『闘う純米酒』上野敏彦著 平凡社、1500円(税抜き)

闘う純米酒』上野敏彦著 平凡社、1500円(税抜き)

 後者の方法論は、一見するととっぴなようだが、実はそんなことはない。商売の基本は、他の人が手を出さないジャンルで世の中が認める価値をつくりだすことだからである。そう考えれば、世間の大勢と逆の目に賭ける=「逆張り」をすることはきわめて合理的な選択なのだ。

 とはいえ、そうした道を貫く中では、世間との軋轢が生じることもある。自分なりの個性を押し出して生きていくためには、それなりの工夫、戦略が必要となる。

 埼玉県蓮田市に、神亀酒造という、ここのところ日本酒通に急速に評判を知られるようになった小さな蔵元がある。本書は、米や水など日本酒の材料に必ずしも恵まれていないこの片田舎の造り酒屋を、ほぼ一代で一流ブランドに育て上げた神亀酒造当主小川原良征の半生を描く。ビールやワイン、焼酎に人気が集まり、マスとしての日本酒市場が縮小する中、なぜ神亀酒造は身の丈に合った発展を遂げることに成功したのか。そこには、小川原の徹底した「逆張り」精神があったことが明らかにされる。

税務署が最大の敵だった

 神亀酒造の歴史の転換点は、1987年に日本ではじめて蔵の酒すべてを純米酒に切り替えたことにある。当時の日本酒業界では醸造用アルコールなどを添加した通称「アル添」酒づくりが主流だった。この「アル添」製法は、もともと戦時中の物資不足を補うためにはじめられた。しかし戦後の混乱期に酒税収入を確実に得るために政府によって奨励され、いつの間にか定着していった。

 こうした「業界の常識」に反旗を翻した小川原は、当初、周囲からさまざまないじめを受ける。最大の敵は、地域の税務署だった。純米酒を熟成させるために蔵で寝かせる製法に理解が得られず、なかなか書類を通してもらえないといったトラブルは日常茶飯事。中小酒蔵の大手への統合を進めたい酒造組合が、酒造好適米を神亀酒造にまわさないなどの嫌がらせを行ったこともあった。

 しかし皮肉にも、淡麗辛口ブームが去り、隆盛を誇った日本酒業界が斜陽化しはじめると、コクがあるのに後味がいい「ほんものの酒」造りに一歩先んじた小川原氏の神亀酒造が一躍注目を集めることになった。

 この逆転を呼び起こした最大の秘密は、「食中酒としての日本酒づくり」という神亀酒造ならではのコンセプトにある。神亀酒造は、個人のみならず、多くの歴史と伝統ある日本料理店に顧客をつかむことで、ニッチ市場の一人勝ちを果たしたのだ。

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