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(2)価格でマンションの質は見抜けない
~ヒューザー物件は「安物買いの銭失い」だったのか?

  • 山岡 淳一郎

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2007年3月30日(金)

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 耐震偽装事件の発覚直後から、誤った思い込みがこの公共的犯罪を巡る議論を矮小化させてきた。それは「ヒューザーのマンションは相場より大幅に安かった」とする誤認である。そこから「だから欠陥だってありそうなものだし、それを買った人は自己責任、安物買いの銭失いだ」という結論と、「(安値に騙されない)自分は大丈夫」という安心感を引き出している人が多いようだ。

 しかしこの思い込みは、2つの点で当を得ていない。第1に「ヒューザーのマンションは安い」と断定できないこと。実際には、ヒューザーの物件は平均的な価格帯で売られていた。次に「マンションの販売価格は、設計・施工の質を担保するとは限らない」ということ。これらの視点からマンションの値段について述べてみたい。

広い割に安いが、「坪単価」では平均的

 まず、ヒューザーのマンションが他と比較して安くはなかった事実を示そう。「偽装・建て替え」へと追い込まれた、東京都東部の旧「グランドステージ(以下GS)」の物件を中心に半径1.5キロ圏で、2002~05年にかけて分譲されたマンション29物件の販売価格データを入手した。この旧GSが分譲されたのは2003年10月。

 ヒューザーのマンション価格が安いかどうかは、同時期、同エリアで分譲された他のマンションと比べなければ意味がない。販売価格に及ぼす地価の影響を同じ程度にしなければ比較にならないからだ。マンションの大きさも、できる限り100戸以下の同規模で揃えてみた。そして比較表を作ってみると…。

旧GS物件の周辺マンションとの比較
分譲時期 物件名 駅から
の距離
(徒歩)
総戸数 平均
坪単価
(万円)
平均
価格
(万円)
平均
専有面積
(平方メートル)
2002年4月 Vハイム I 7分 32 162.9 3335 67.67
2002年5月 Pタワー 3分 38 147.2 2754 61.84
2002年7月 Vハイム II 7分 32 158.1 3298 68.94
2002年9月 Vハイム III 7分 32 157.5 3132.5 65.76
2002年9月 Pタワー I 3分 38 152.3 3478 75.48
2002年11月 Hホーム I 4分 79 147.9 3420 76.45
2002年11月 Rパーク 16分 102 124.8 2743.3 72.69
2002年11月 Rパーク 16分 102 125.6 2900.7 76.32
2002年12月 Jマンション 4分 27 154.8 3191.1 68.15
2002年12月 Hホーム II 4分 79 146 3321 75.17
2003年1月 Pタワー II 3分 38 154 2900.9 62.29
2003年3月 Hホーム III 4分 79 146 3321 75.17
2003年4月 RマンションEX不動産 5分 47 137 2692.8 64.96
2003年10月 LS I 8分 74 162.2 3561.3 72.6
2003年10月 旧GS 6分 37 144.8 4611.1 106
2003年11月 CH 1 5分 55 125.1 2688 71.01
2003年12月 LS II 8分 74 160.1 3374.6 69.67
2004年2月 CH 2 5分 55 125.1 2688 71.01
2004年2月 CH 3 5分 55 129.6 2615.8 66.7
2004年5月 JP 1 3分 123 140.5 3110.9 73.17
2004年6月 Nランド1 4分 39 151.1 3429 75.02
2004年7月 Cサウス1 6分 40 144.7 3049.1 69.66
2004年7月 Nランド2 4分 39 154.1 3330.7 71.45
2004年7月 JP 2 3分 123 134.1 2883 71.06
2004年8月 Cサウス2 6分 40 149.2 3322.1 73.63
2004年10月 Cサウス3 6分 40 155.7 3688 78.31
2004年11月 Nランド3 4分 39 156 3465 73.4
2004年11月 Nランド4 4分 39 151.7 3287 71.62
2005年2月 Lガーデン 5分 149 160.6 3518.6 72.43
(分譲時期は2002年4月~2005年2月、旧GS物件の分譲は2003年10月)

 旧GS以外のマンションの平均専有面積は71~72平方メートルで、その販売価格は3054万円となる。一方、旧GSは、専有面積106平方メートルで価格は4611万円。群を抜いて「広く」、そして「高価」。広さが一般的マンションの1.47~1.49倍で、価格は1.51倍である。広さと価格の平均的相関の中にすっぽり収まる。特段、他と較べてディスカウントしてはいないのだ。

 坪単価はどうか。旧GSを含む29物件のアベレージが148万円で、旧GSのそれは145万円。これまた広さに対して、ごく平均的な値段と言えよう。坪単価で比べれば東京都が分譲した物件などは、旧GSよりはるかに安値で、建てられている。

物件から見る限り、合理的な値付け

 多くのマンションデベロッパーは、1戸当たりの専有面積を狭くし、販売戸数を増やして利益を上げようとする。これに対してヒューザーは、100平方メートル以上の広さをウリに面積当たりの価格を平均レベルにとどめて売った。世間の「100平方メートル以上は『億ション』」のイメージを逆手に取ったわけだ。「億ション」は、都心の港区など地価の高い場所に建てられ、内装や設備にも凝った広いマンション。地価や付帯設備費が重要なポイントなのだが、旧GSの「100平方メートル超」という広さだけに目を奪われたことから誤解が生まれている。

 さらに言えば、事件報道を先導した大手紙の記者にも「100平方メートル超=億ション」という先入観があったことから、「本来億ションなのに、それを安値で売ったヒューザー」というバイアスが作り出されてしまった。行政側も、この思い込みを鵜呑みにした。地価や付帯設備が異なればその前提は崩れるのだが。

 ヒューザーは「億ション化」しないよう、モデルハウスも物件ごとには作らず本社だけに置き、間取りも規格化を推し進めた。内装や設備は必要最小限にしている。たとえば直床・直天井で壁紙はまったく凝っておらず、床暖房や風呂場の乾燥設備はなし。カーテンレールや玄関扉などもひと昔前のもの。それらは購入者が好みに応じて改変すればいいとの戦略を採った。住戸をよりスケルトン(構造体)に近い状態で販売することで、面積当たりでは平均的な値段を維持した。

 そこに躯体の手抜きを生むコスト的必然性は見出せない。

(ここで念のため申し上げておくが、私にはヒューザーとその関係者を擁護する意図はまったくない。「被害者は、価格から見て、旧GS物件は手抜き工事と判断すべきだった」という意見が正しいかどうかを、検証するために記述している)

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