• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

第1回 37歳で引退し、後半生は美食三昧

料理は芸術、美味探求は教養人のたしなみ

  • 水谷 彰良

バックナンバー

2007年4月26日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

礼節を知り、なお究めたい美食

 「ベッドと食卓に礼儀は不要」というのがイタリア人の鉄則。快楽の肯定にかけて他民族の追随を許さぬ彼らは、ひとたび食事を始めて食の快楽に身を委ねれば、手づかみだろうと汁をはね散らかそうと、お構いなし。まるで「食べるために生きている」と言わんばかりの健啖(けんたん)ぶりを見せる。ベッドの中でもまたしかり、かどうかは定かでないけれど、たぶんそうなのだろう。

 古来「衣食足りて礼節を知る」と言うけれど、礼節を知ってなお、究めてみたいのが美食ではなかろうか。その昔、皇帝や王侯貴族の特権だった美食も、現在は私たちの手の届くところにあるからなおさらだ。その基礎を形作ったのが、19世紀初頭のフランスに巻き起こったグルメブームだった。火つけ役はブリア=サヴァランの著した『美味礼賛』(原題:『味覚の生理学Physiologie du gout』)。1826年にパリで初版が出版され、今日まで脈々と読み継がれているこの本に書かれた、有名な格言を引用してみよう。

動物は食らい、人間は食する。教養があってはじめて人は食べ方を知る。
食卓の快楽は、年齢、身分、生まれた国を問わず、すべての人に毎日ある。…それは他の様々な快楽がなくなっても最後まで残り、私たちの慰めとなる。
新しい美味の発見は、人類の幸福にとって天体の発見に優る。

 その通り!と頷(うなず)いた方は、食通の素質がありそうだ。

美食家ロッシーニの料理を楽しむ

ロッシーニの肖像写真(カルジャ撮影、1862年、水谷彰良蔵)

ロッシーニの肖像写真(カルジャ撮影、1862年、水谷彰良蔵)

 かくして料理は芸術、美味探求は教養人のたしなみと認知されるに至った。そして歴史に名を残す稀代の食通たちが現れる。中でも有名なのがイタリア人の作曲家ロッシーニ(Gioachino Rossini、1792-1868)。歌劇『セビリャの理髪師』『ウィリアム・テル』で天才作曲家の名声をほしいままにした彼は、37歳の若さで引退して美食三昧の後半生を送ったと言われるが、それだけではない。ロッシーニは料理の創作に情熱を注ぎ、トリュフとフォアグラを使った様々な料理にその名を残したのである。

 なんだ、作曲家が料理人に転進しただけか、と思ってはいけない。ロッシーニはロスチャイルド家のシェフと親しく交際し、パスタ料理の真価をフランスに知らしめ、晩年には各界名士を招いて毎週美食の晩餐会を催し、『ロマンチックなひき肉』『バター』など、料理や食材の題名の音楽まで作曲したのである。まさに多芸多才、筋金入りの美食芸術家だ。篆刻(てんこく)、書画、陶芸、著作、食通、料理家として名高い北大路魯山人に当たる人物と言えば、お分かりいただけるだろうか。ちなみに魯山人は人間国宝の認定を辞退し、ロッシーニは「勲章より珍味の方がうれしい」と言って勲章を送り返した。真の芸術家なればこそ、受勲や位階に頓着せず、おのれの道を究めることができたのである。

コメント0

「ロッシーニの料理」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック