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第3回 自分さがしの展覧会遍歴を始める

日本美術の特質はどこにあるのか、疑問に思う

  • 宮島 新一

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2007年5月10日(木)

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 さて、美学という哲学の一種や、西洋美術とのはざまで「大和絵」()を研究対象としてはみたものの、まだまだ範囲は広い。鑑賞と研究は違うとは言うが、まったく心が動かない作品を研究対象にするのもどうかと思った。一刻も早く、いったい自分は何が好きなのかを明らかにしなくてはならない。そこから自分さがしの展覧会遍歴が始まった。

 毎年秋に奈良国立博物館で開かれる正倉院展に最初に行ったのは、手元に残るカタログを見る限りでは、学部に進んだ1966(昭和41)年ということになる。この年は正倉院絵画の調査完了と報告書の出版を記念した「絵画特集」だった。同じ年に絵画史の研究を志した私は実に恵まれていた。日本の絵画の源流を一堂のもとに見られる機会は、その後二度とないからである。

四方から見られる山水画が印象に残る

『黒柿蘇芳染金銀山水絵箱(くろがきすおうぞめきんぎんさんすいえのはこ)』 正倉院蔵

『黒柿蘇芳染金銀山水絵箱(くろがきすおうぞめきんぎんさんすいえのはこ)』 正倉院蔵

 もちろん有名な『鳥毛立女図(ちょうもうりゅうじょず)』屏風も出ていたが、よく理解できなかった。もっとも印象に残ったのは、長方形をした『黒柿蘇芳染金銀山水絵箱』の蓋表(右写真)に描かれた「山水画」であった。金泥と銀泥のみの山水ということは、技法が水墨画とまったく同じということである。あまり熱心に言う人はいないが、中国の唐時代に生まれたばかりの水墨画がいち早く日本にも伝わっていたことになる。

 水墨画というと、室町時代のものと思われがちであるが、実際には奈良時代以来、絶えず日本に入っていた。だいたい画家は新しい表現方法にはきわめて貪欲なものである。近・現代を例にとればすぐわかるだろう。水墨技法のように、自由な筆の跡がいつの間にか山水となる、マジックのような手法を画家が見逃すわけがない。即刻、マスターしたのがこの「山水図」だった。

 この図には一般とは大きな違いがある。それは山岳が四方それぞれが正面となるように、四つに分けて描かれている点である。1つの方向から見るようには描かれていない。これは箱という、どのような方向に置かれてもかまわない形体を意識したとも考えられるが、そうとも限らない。同時に、東大寺が所有する農地を描いた『開田図(かいでんず)』と称する地図が展示されていたが、同じように四方それぞれが正面となるように山並みが描かれている。

 ただし、両者には違いもある。箱の場合は見る人が場所を変えながら外側の四方から見るようになっている。これに対して『開田図』の場合は、描くべき土地の中心に人が立って、順次四方を見たままに描かれている。視点が絵の外側にあるのと内側にあるのとの違いがある。山水の全体を見ようとすれば、どちらかをとるしかない。仮にこれを「回転図法」としよう。どうしても1つの視点から全体を見たいのなら、鳥のように舞い上がって途方もなく高いところから見下ろしたように描くしかない。これには「鳥瞰(ちょうかん)図法」という言葉がある。

(注) 9世紀から11世紀にかけて、やまと言葉による和歌と日本的な主題を描く絵画が次第に表現を深めていった。それ以前の中国的な主題を描いた「唐絵」に対して、日本の風物を大画面に描いたものを「大和絵」と呼ぶ。

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