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【第3回】 世界を驚かせたマーラーの交響曲全曲録音

後期ロマン派的な演奏から脱した新しいスタイル

  • 諸石 幸生

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2007年5月11日(金)

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川口義晴さんが1980年代半ばに世界を驚愕(きょうがく)させる大仕事をやってのけた。それはエリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団によるマーラーの交響曲全集というとんでもない大型プロジェクトだった。当時はそれほど名声のなかったインバルの起用、日本のレコード会社がドイツで名門オーケストラを収録するというスケール感、さらに2年に満たない短期間で全9曲を収録した実行力など、信じ難い偉業と言うにふさわしい。これは数回に分けてでも聞く価値のある話である。まず最初は、着手に至る苦労話、そして録音を始めてみると、といった第1楽章の話である。


―― インバルとの接点は?

音楽プロデューサーの川口義晴さん

音楽プロデューサーの川口義晴さん (写真:清水 健)

川口: もともとはNHKのFM放送でマーラーのライブ録音が流れていて、話題になってたんです。友人たちから勧められて聴いてみると本当に凄(すご)いマーラーをやっていた。これはぜひ録音したいと考えました。ちょうどその頃、インバルが日本フィルハーモニー交響楽団に客演してましたから、滞在しているホテルに会いに行きました。彼はもちろん日本コロムビア(現・コロムビアミュージックエンタテインメント)なんて知りませんでしたよ。でもインバルはオーディオマニアでね、私たちが録音していたPCM(パルス符号変調)録音のLPレコードを日本に来た時、買い集めていたくらいでした。でも「あんまりいい音がしていない」って言ってましたけどね(笑)。それで、これからはデジタルの時代だし、技術も発達してずっといい音になるから、あなたのマーラーを収録したいって提案したんです。

社のスタッフを説得するも、全然話が進まず

―― それですんなり滑り出したんですか。

 とんでもないですよ。インバル側にも、私たちの方にもネックがありました。インバル側の最大の問題は、私が放送録音で聴いたように、彼らが既に全曲をもう演奏してしまっていたことです。これをもう一回、演奏会スケジュールに組んで演奏し直すのは並みの努力ではできません。オーケストラも放送局も説得しなきゃならない。これはインバルにかかっている。インバルも、当初はそこまでやる気がない雰囲気でしたが…。

―― インバルとしてもこのマーラーは自信があり、演奏を彼の作品として残したかったんでしょうね。

 何回か手紙のやり取りをしているうちに、インバルもデジタルで残したくなったんでしょうね。間もなくやれそうだとの返事がきたんです。

 でも向こうがやると言ってきたから、今度はこっちが大変になりました。社内を説得しなきゃなんない。味方が数人いましたが、一番の身内だと思っていた人たちが「そんな大きな仕事できるわけないよ」って引いちゃったりね、「社内を説得するなら勝手にやれ」って。とにかく社内でインバルを知っている人間なんていないわけですよ。確かにテルデックでのブルックナーは数枚レコードが出ていましたし、そのほかにロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とか、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の録音がフィリップスにありました。でも、そんな程度――というのはそれらはろくに売れてなかったんです――でしたし、そもそもレコード会社の人間なんて自分の会社のことしか知らないから、全然話が進まない。でもそんなことをいくら話しても分かるわけじゃないし、社内調整は大変でした。

 ただ少数ですが、これは面白いかもしれないという人が上の方にいて、それで少しずつ交渉を始められたんですね。また、当時はドイツのデュッセルドルフにハードの販売子会社があって、そこの社長がずいぶん根回ししてくれたんです。

 僕自身、あの時、マーラーをやるのはもう遅いかなという気持ちが正直なところありました。というのは、レナード・バーンスタインが2回目のマーラー全集の録音に着手していて、それがとても高い評価を得ていました。ベルナルト・ハイティンクは既に終えていたし、ロリン・マゼールもやっていて、二番煎じになるかもしれないと考えていたのは事実です。バーンスタインなんて競合相手としては巨大すぎるし。

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