「村田真の「手が届く現代美術」」

現代日本社会をチクリと風刺する

風間サチコの痛快な木版画

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2007年5月28日(月)

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 さて、今月からいよいよギャラリーを訪ね歩き、「手が届く現代美術」を紹介していきたい。今回は美術関係者にもまだなじみの薄いギャラリーに行ってみた。高円寺から歩いて2〜3分、そろそろ再開発がかかりそうな場末の雰囲気が漂うビルの3階に昨年オープンしたばかりの「無人島プロダクション」である。

 アパートみたいな階段を上って中に入ると、展示スペースは狭いし、いかにも部屋を急いで改造したという感じ。それもそのはず、ここはもともと現代美術の画廊に勤めていた藤城里香さんと、音楽ライターの妹沢奈美さんがオフィスとして借りた場所。だから名称もギャラリーではなく、マンガやアニメのスタジオのように「プロダクション」としたのだが、どうせなら作品も展示しようと一画をギャラリーに改装したのだという。銀座あたりのコジャレたギャラリーに通い慣れた紳士淑女は面喰(く)らうかもしれないが、新しいアートというのはまさにこういう場所から生まれてくるものなのだ。

世界的に認められる日本の木版画の品質

 その無人島プロダクションで開かれているのが「風間サチコ展」だ。風間は知る人ぞ知る木版画のアーティスト。1990年代から「アーバナート」などのアートコンペに参加、2006年には岡本太郎記念現代芸術大賞展に大作を出品し優秀賞を受賞、その作品が文化庁に買い上げられ注目を集める。

 今年の冬にはこの場所で新作展を予定しており、今回はお披露目ということで旧作中心の展示となった。驚いたのは、私が訪れたオープニング翌日にはすでに出品作品の8割方が売約済みだったこと。売れた作品はプライスリスト(価格表)に赤丸がつくので分かる。

 失礼ながら、こんなに売れているとは思わなかった。もちろん昨年の受賞や文化庁の買い上げも効いているだろうし、ギャラリストの営業努力も大きいはず。でも最大の要因は、木版画という表現形式にあるのではないかと思うのだ。

 だいたい資産家やIT長者ならいざ知らず、ちょっと余裕のあるサラリーマンでも巨匠の油絵などは手が出ない。とりあえず水彩や素描や版画を買ってみるものだ。とりわけ版画は1つの版から数十枚も数百枚も刷れるので、1枚の単価は割安になる。もちろん油絵のような質感や、1点もの特有のアウラ(霊性のようなもの)はないけれど、印刷物と違って作者が監修しサインも入るので、リッパな美術作品に違いない。中でも人気が高いのが木版画。江戸時代から浮世絵版画の伝統もあって、日本の木版画の質の高さは世界的に認められたところだ。

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著者プロフィール

村田 真(むらた・まこと)

村田 真

1954年、東京生まれ。東京造形大学卒業。ぴあ編集部を経てフリーランスの美術ジャーナリストに。北海道新聞、ウェブマガジン『artscape』などに連載するほか、『美術手帖』『読売年鑑』などに執筆。著書に『美術家になるには』、訳書に『ビジュアル美術館12絵との対話』などがある。慶応義塾大学・学習院女子大学非常勤講師のほか、横浜BankARTスクール校長を務める。



このコラムについて

村田真の「手が届く現代美術」

空前の美術ブームに沸く欧米市場に対して、日本市場はよやく底を打ち、上向きになってきたところ。最近では30代の人が現代美術作品を購入する例が多いという。どうせ買うなら、本物の美術品。アクセサリーやバッグなどのブランド品を買う喜びとはひと味違った楽しみがある。現代美術に通じた美術ジャーナリストの村田真氏に現代美術作品の見方、買い方を指南していただく。

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