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『どうせ年をとるなら 陽気な笑いで この顔に皺をつけたい』

矢萩 春恵(やはぎ・しゅんけい) ―― 書家

  • 大熊 文子

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2007年5月31日(木)

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年月を重ねたことで、筆の織りなす奥深さを知りました

NBオンライン: 女性書家の第一人者として国内のみならず、世界各地で個展を開催なさったり、米国ハーバード大学で書をお教えになったりと国際的にもご活躍ですね。外国人も関心を寄せる“書”の魅力とは、どんなところにあるのでしょうか。

書家、矢萩 春恵氏

書家、矢萩 春恵氏

矢萩: そもそも表現すること自体が楽しいことですが、とりわけ書には、奥深さや、自分自身を鍛練させる喜びがあるのです。そのことに取りつかれて、すでに半世紀以上筆を握っております。

 言うまでもないことですが、文字は線と線の組み合わせでできております。書に慣れ親しんだその時間分、一本一本の“線”の表現手法は増えましたね。

 漢数字の“一”を書くにしても若い時には、ただただ無我夢中で引いておりました。今は、墨の色や量、筆の角度、太さ、速度などを加減することで、微妙な変化をつけて書き分けております。

 文字を構成している一本一本の線をばらばらにして、それから自分なりに組み立て直すこともいたします。お手本に従うのではなく、自分なりの形を編み出すのです。こういった創作活動は生みの苦しみがありますが、それを大きく上回る面白みももたらしてくれます。

 紙の上にどのように文字を置くかでも、書の雰囲気が随分異なってきますし。
これらを総合的に考えて、紙に向かうようになったのは、ひとえに好きで続けることができたからでしょうね。筆の織りなす妙味を知るまでは、たくさんの修練を積まなければならず、時間がかかりました。

女を忘れ、政治の手腕を振るった西太后の悲しみがわかる気がします

―― 書の世界を多くの方に伝えるためにお始めになったという、ユニークな個展『書、そして、西太后』の開催が間近に迫ってまいりましたね。

矢萩: このシリーズは、みなさんがよくご存じの物語を私が読み込んで、心に染みたフレーズを選び、それを墨書して展示するものです。書を通して物語を感じていただくという趣向になっています。第一回目の『書、そして、シェイクスピア展』は1996年に行い、2002年には『書、そして、忠臣蔵展』を実施いたしました。今回の『書、そして、西太后』をもって、物語展開三部作が完成いたします。

―― 今回、西太后を選ばれたのはどうしてなのですか。


矢萩氏愛用の筆と硯

 シェイクスピアで英国、忠臣蔵で日本の作品を扱った後に目が行ったのが、中国でした。中国は、日本と文化的に深いかかわりがあり、今世界で最も注目されておりますから。

 それで、3年前から中国を舞台にした小説や歴史書を広く読み始めまして、浅田次郎先生の『蒼穹の昴』に出会ったのです。

 西太后といえば、日清戦争の軍費を頤和園の修復につぎ込み、それで敗北したという有名なエピソードなどがございますよね。それに違わず、大部分の小説や映画では、夫咸豊帝を蔑ろにし、その後即位した息子同治帝、我が子同様に育てた甥の光緒帝の摂政として46年もの間君臨し続け、権利欲の塊と化した鬼女として描かれています。

 しかし、今専門家の間では、満州人と漢人の軋轢、新旧の官僚たちの権力対立などで国力の衰えた清を列強国が凄まじい勢いで我先に奪い合うたいへん難しい状況にあって、政治の手綱をしっかり握り、列強の干渉を最小限に押し止めた敏腕の政治家としての評価が広がりつつあるのです。

 『蒼穹の昴』は、この歴史認識に立ち、本来は繊細で子を思う優しい母親であるにもかかわらず、我が子もあやめてまでも政治家としての大義を全うせざるを得なかった西太后の女性としての深い悲しみを織り込みつつ、清の崩壊が書かれています。


西太后の生き方に触発されて生まれた作品

 今回の個展のサブタイトルは「猛女にしてぼさつ(菩薩)」といたしました。

 これは、西太后の猛女の部分と、亡くなった息子と同じ年の光緒帝に疲弊した大国とその四億人の民の運命を押しつけることができずに、心を鬼にして光緒帝を政から遠ざけようとする菩薩の面、この2つの相反する姿が強烈にイメージされて、私の目に浮かんできた字句なのです。

 西太后の生き方をたどりつつ自分の人生を振り返ってみると、いったい女性の生き方として何がよいのだろう、とつくづく考え込んでしまいます。

 そんな私の思いを端的に表した言葉が、『蒼穹の昴』の中で西太后に仕える宦官の口からでてきます。

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