• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

はるばる石垣島

2007年4月26日~27日

2007年5月30日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 4月26日は鹿児島から那覇、那覇から飛行機を乗りついで石垣島へ。朝鹿児島を出て、二時過ぎに石垣に着いた。明後日には労働組合主催の講演会があって、そこで話をする予定になっている。講演まで二日も余裕があるのは、むろん虫捕り用の時間である。

ジャングルで虫捕り(右は渡辺賢一先生)

ジャングルで虫捕り(右は渡辺賢一先生)

 空港にはトンボ屋さんの渡辺賢一先生がお出迎えくださった。もう二人、組合の方もお見えくださったが、虫日記とは関係がない。渡辺先生とは初対面もいいところだが、虫屋にそういうことは無関係。ホテルに荷物を置いて、即座に飛び出す。

 渡辺先生の運転で、まず真栄里(まえさと)ダムの周囲に行く。車を降りて葉っぱを叩きはじめたら、すぐに本土では見ないツツハムシが落ちてくる。屋久島、鹿児島とは、なにより暖かさが違う。24度ある。もう虫が大量に発生しているらしい。嬉しいなあ。

 叩いていると、カミキリばかり落ちてくるような気がする。枯枝なんか叩くからだが、葉っぱを叩くつもりでも、枯枝が混ざってしまうのである。一昨年、昨年の台風で、木がずいぶんやられているらしい。枯枝から落ちてくるのは、サビカミキリとかいう名のついた、地味なやつ。当然ワビカミキリというのがあるはずだろうが。なぜか、それがない。間違って新種が捕れたら、地味な色彩ならワビカミキリと名前をつけよう。日本文化の伝統を維持しなければいけない。

石垣島のカミキリムシ

石垣島のカミキリムシ


 こんなに虫が出ているのなら、鹿児島なんかやめて、こっちに来ればよかった。というのは、じつは間違い。雨の中を屋久島、鹿児島と苦労して虫捕りをしたから、石垣島がありがたく思えるのである。現在の幸福は、過去の不幸の裏返しである。はじめから石垣に来ていれば、「こんなものだ」などと思うに違いない。虫屋の欲には際限がない。しかもつねに忘恩の徒である。というふうな説教をしたくなるのが、年寄りになった証拠。もっとも年寄りだと端からわかっているのだから、証拠なんか要らない。

 しかし虫が捕れるのと、捕れないのでは、元気が違う。道端の木を片っ端から叩く。その気力がどこから湧いてくるのか。十回叩いて一匹取れれば、まあ辛抱できるが、二十回に一匹では、気力が萎える。石垣は一回叩いて虫一匹は確実だから、ひたすら叩くことになる。出発したのが二時だから、まもなく暗くなってきて、目が見えなくなってきた。夕食の約束もあるし、ボチボチ帰る時間といわれて、車に戻る。ところが荷物を出そうとして、渡辺先生が車の鍵をトランクに閉じ込めてしまった。べつな人に迎えに来てもらうしかない。その待ち時間が儲かったから、また叩く。こういうときには虫が捕れるものなのである。今年になって最大のカミキリが落ちてきた。キンケビロウドカミキリ。びっくりしましたな。鍵を車に閉じ込めなきゃ、捕れなかった。

 先月の台湾では、もっと大物を捕った。ただし虫ではなく、哺乳類である。葉っぱを叩いたら、コウモリが落ちてきた。叩き網の上に毛むくじゃらの玉が落ちていたので、なにかの巣かと思った。同行した新里氏が、コウモリ専門家の吉行さんに届けたらしく、「新種かもしれません」というお礼状をいただいた。今日はそういう外道はキノボリトカゲ二頭。

石垣島のゾウムシ

石垣島のゾウムシ

石垣島のクチキムシ

石垣島のクチキムシ

 虫が捕れると、笑いが止まらない。クチブトゾウムシも二種は捕ったし、クチキムシもいたし、ほかにもいろいろあるし、嬉しいな。家に帰って小さい虫を顕微鏡で見るのが楽しみ。近眼が老眼になっているから、肉眼では話にならない。虫眼鏡はさすがに持参しているから、野外でちょっと見てみようかと思ったら、車の鍵と一緒に、渡辺先生の車のなか。夜になって虫眼鏡で見ると、カミキリは同じようなサビカミキリばかり。ただし大きさがかなり違う。個体差が大きい。それでもカミキリは全部で五種類を捕った。花でも掬えば、まだまだ捕れるはず。というふうに、捕れれば捕れたで、すぐに欲が出る。

 私はカミキリなんか集めていない。カミキリを捕るのは、知り合いにカミキリ屋が多いからである。そういう人たちにいつもお世話になるので、お土産にと思って捕る。でも私が捕るようなカミキリは普通種が多く、好事家向きではない。ここのお土産にはベニホシカミキリがいいらしいが、捕れたら渡辺先生に上げることになっている。どうせ私には捕れないから、安心していくらでも約束できるのである。

コメント2

「養老孟司先生のタケシくん虫日記」のバックナンバー

一覧

「はるばる石垣島」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長