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黒字経営が難しい音楽祭を成功させるカギ

それは3つの資質を備えた人物の存在にある

  • 林田 直樹

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2007年5月29日(火)

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 ゴールデンウィークに東京国際フォーラム(東京・有楽町)で開催された「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(熱狂の日) 音楽祭2007」が終わった。主催者の発表によると、出演したアーティストの総数は2264人。チケットの販売数は20万441枚。今年の来場者は近くの丸の内エリアで行われていた関連イベントと合わせて106万人だったという。昨年の来場者が69万5000人、初年度の一昨年が32万33000人だから、すごい勢いでこの音楽祭が成長していることがお分かりになろう。

 しかし、皆さんはおそらく素朴な疑問を持つはずだ。クラシック音楽というものは、そんなに儲(もう)かるものなのか? 果たしてちゃんと事業性のあるものなのか? 採算ベースにのるビジネスなのか?――と。

 答えは否である。どんなに内容豊かなクラシック音楽祭であろうと、それだけ単体で儲かるものなどありはしない。オーケストラや劇場にしても同じことだ。事業面だけで見るなら、一部のプロモーターやマネジメント会社を除いて、ほとんどが赤字経営なのである。では、そこで興業者はどのようにつじつまを合わせているかといえば、企業や個人のスポンサーを募り、できることなら国や県や市から公的な援助を仰ぐこと。それ以外にない。

仏ナントの音楽祭、6割が公私の援助に頼っている

 ラ・フォル・ジュルネの本場、フランス・ナントのケースを見てみよう。1995年に創設され、すでに13年も継続されているが、その収支バランスを見ると、筆者の手元にある資料では2005年の場合、ざっくりこうなる。

【収入の部】

  • チケットなどの売り上げ: 128万1千ユーロ(2億880万3千円)=41.6%
  • ナント市ほかの公的援助: 122万3千ユーロ(1億9934万9千円)=39.7%
  • 私企業からの援助: 57万5千ユーロ(9千372万5千円)=18.7%
  • 合計: 307万8000ユーロ(5億171万4千円)

【支出の部】

  • アーティスト経費: 207万ユーロ(3億3741万円)=67.6%
  • オーガニゼーション&コミュニケーション費: 99万3000ユーロ(1億6185万9千円)=32.4%
  • 合計: 306万3000ユーロ(4億9926万9千円)

※2005年のナントのラ・フォル・ジュルネのチケット実売数は11万枚強。なお、日本円への換算は、1ユーロ=163円で計算した。


 つまり、世界で最も成功している音楽祭の一つであるナントのラ・フォル・ジュルネでさえ、総収入のうちチケットなどの売り上げの占める割合は、41.6%に過ぎない。ほぼ6割(ナントの場合は公私合わせて約3億円)を援助に頼っているのである。こうした状況は、多かれ少なかれクラシック音楽の各種イベントや劇場の運営についても当てはまる。

成功した別府アルゲリッチ音楽祭の場合

 今年4月、大分県で「第9回別府アルゲリッチ音楽祭」が開催された。これは、世界的名ピアニストであるマルタ・アルゲリッチを中心とし、1994年に音楽祭の原型となる企画がスタートしており、足掛け13年もかけて定着している音楽祭である。今や大分県内の各地には14カ所の拠点ができており、単に有名な演奏家のコンサートを聴くための音楽祭にとどまらず、年間を通して、音楽に限らず文化の振興と普及活動、教育活動全般を行い、地域に住む人々同士のコミュニケーションを活性化させる役割を果たしている。こうした草の根的な広がりと交流の意義を県や市も認め、今年の3月上旬には広瀬勝貞・大分県知事を理事長、浜田博・別府市長を副理事長とする財団法人アルゲリッチ芸術振興財団も設立され、県や市の全面的なバックアップ体制を得た。典型的な成功例と言っていいだろう。

 その立役者は、アルゲリッチの親友であるピアニストの伊藤京子さんだ。別府に実家のある伊藤さんは、たまたまアルゲリッチを別府に招き、アルゲリッチが別府を心休まる場所として大いに気に入ったことがきっかけとなって、この音楽祭は出発した。しかしその道のりは決して平坦ではなかった。いかにアルゲリッチがクラシック音楽の世界で超ビッグネームであろうと、別府の人々にとってアルゲリッチなど「誰?それ?」という存在でしかなかったのだから。それでも伊藤さんは、もともとはマネジメントや音楽祭運営など全くの素人だったにも関わらず、総合プロデューサーとしてゼロから出発し、根気強く努力を重ねてきた。県や市や地元企業からの経済的な援助はもちろんのこと、様々な協力者が集まったのは、彼女の人柄と熱意によるところが大きい。ここまで音楽祭は継続・発展できてきた理由について、伊藤さんはこう語る。

 「アルゲリッチの精神や哲学を、絶対に、次の世代に伝えていかなくちゃいけない、それが私の使命だと、いつからかそういう気持ちが芽生えてきたんです。それは、100年後の未来にも人間が生きている限り、必要なことです。それが引き継がれていく限り、私たちは生きていける。私は、何をおいてでも、アルゲリッチが別府に対して持ってくれる変わらない愛情と信頼を裏切ってはいけないと思う一念で、ここまできたんです。自分のことだったら、とうの昔に放り出していますよ」

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