「「ナショナル ジオグラフィック日本版」編集長の「地球からの報告」」

「極地氷解」〜暴走する地球温暖化

“炭鉱のカナリア”はもう虫の息と思われよ

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2007年6月4日(月)

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 南極やグリーンランドなど、世界中の氷床や氷河が科学者の予想を上回る速度で解け始めた−−。『ナショナル ジオグラフィック日本版』6月号では、暴走する「地球温暖化」の実態に迫る衝撃的なルポを紹介した。炭鉱のカナリアに例えるなら、すでに自らの死をもって危険を知らせる、その直前、という段階だ。

 ここでは、その一部を紹介させていただく。話は、南米ボリビア、標高5260メートルのチャカルタヤ氷河にあるスキー場の惨状から始まる。

 世界で最も高い所にあるスキー場だ。設備といえば、長さ1キロ足らずのゲレンデが1カ所と、古びた簡易リフトがあるだけ。空気が薄過ぎるため、スキーヤーたちは酸欠気味。頭痛を紛らわすためにコカの葉を煎じたお茶を飲んでいた。

 この高地にスキー場ができたのは、小さな氷河があったおかげだという。全盛期には南米選手権の会場になったこともあった。雨期になると氷河に雪が積もり、どうにかゲレンデらしきものになる。

 1939年にスキー場がオープンした時には、すでに氷河は解け始めていたが、ここ10年ほどで一気に後退し、昨年には氷の塊が3カ所残るばかりになってしまった。今や一番大きい氷塊でも直径200メートルほどしかなく、リフトの下には岩だらけの地面が広がっている。

 日本人にはあまりなじみがないが、高山の氷河から極地の広大な氷床まで、地球上のあらゆる場所で、誰も予想しなかった勢いで氷が解け始めているのだ。

 91年からチャカルタヤの氷河を観測してきた科学者たちも、まだ数年は安泰と見ていた。地球温暖化が進めば、氷河が解けるのは十分予想されていたが、そのスピードは科学者の予想を超えていたわけだ。

 気温の上昇ペースから計算できるスピードよりも、極めて速いペースで氷の融解が進んでいる。

 氷河や氷床は、わずかの気候変動にも敏感に反応することが分かってきた。グラスの中の氷が一定のペースで解けるのとは違い、氷河や氷床はいったん解け始めると、どんどん融解が進む傾向がある。チャカルタヤの場合は、氷河の一部が解けて黒っぽい岩が露出したため、太陽熱をよく吸収するようになり、融解が加速した。生じた変化がさらに悪影響を及ぼす負のフィードバック効果だ。そうして山岳地帯や極地の氷床は急激に縮小しつつある。



ひと夏の間に60メートル分の長さが消えたアイスランドのソルヘイマ氷河。気温の上昇に伴い、この氷河は過去10年で500メートルも後退した。
ひと夏の間に60メートル分の長さが消えたアイスランドのソルヘイマ氷河。気温の上昇に伴い、この氷河は過去10年で500メートルも後退した。
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著者プロフィール

藤田 宏之(ふじた・ひろゆき)

『ナショナル ジオグラフィック日本版』編集長。1987年に日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社。『日経ベンチャー』『日経ビジネス』の編集などを経て、2007年4月から現職。『ナショナル ジオグラフィック』は米国ワシントンD.C.に本部を置く1888年設立のナショナル ジオグラフィック協会が発行し、世界約180カ国で850万人が購読する月刊誌。自然・野生動物・社会・文化・探検・科学など、地球とそこに生きるすべての生き物の営みを、世界の一流写真家が撮りおろす美しく迫力に富んだオリジナル写真と、正確で臨場感あふれる記事で紹介している。このコラムは『ナショナル ジオグラフィック日本版』の最新号の特集から、その内容を要約して紹介する。

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