南極やグリーンランドなど、世界中の氷床や氷河が科学者の予想を上回る速度で解け始めた−−。『ナショナル ジオグラフィック日本版』6月号では、暴走する「地球温暖化」の実態に迫る衝撃的なルポを紹介した。炭鉱のカナリアに例えるなら、すでに自らの死をもって危険を知らせる、その直前、という段階だ。
ここでは、その一部を紹介させていただく。話は、南米ボリビア、標高5260メートルのチャカルタヤ氷河にあるスキー場の惨状から始まる。
世界で最も高い所にあるスキー場だ。設備といえば、長さ1キロ足らずのゲレンデが1カ所と、古びた簡易リフトがあるだけ。空気が薄過ぎるため、スキーヤーたちは酸欠気味。頭痛を紛らわすためにコカの葉を煎じたお茶を飲んでいた。
この高地にスキー場ができたのは、小さな氷河があったおかげだという。全盛期には南米選手権の会場になったこともあった。雨期になると氷河に雪が積もり、どうにかゲレンデらしきものになる。
1939年にスキー場がオープンした時には、すでに氷河は解け始めていたが、ここ10年ほどで一気に後退し、昨年には氷の塊が3カ所残るばかりになってしまった。今や一番大きい氷塊でも直径200メートルほどしかなく、リフトの下には岩だらけの地面が広がっている。
日本人にはあまりなじみがないが、高山の氷河から極地の広大な氷床まで、地球上のあらゆる場所で、誰も予想しなかった勢いで氷が解け始めているのだ。
91年からチャカルタヤの氷河を観測してきた科学者たちも、まだ数年は安泰と見ていた。地球温暖化が進めば、氷河が解けるのは十分予想されていたが、そのスピードは科学者の予想を超えていたわけだ。
気温の上昇ペースから計算できるスピードよりも、極めて速いペースで氷の融解が進んでいる。
氷河や氷床は、わずかの気候変動にも敏感に反応することが分かってきた。グラスの中の氷が一定のペースで解けるのとは違い、氷河や氷床はいったん解け始めると、どんどん融解が進む傾向がある。チャカルタヤの場合は、氷河の一部が解けて黒っぽい岩が露出したため、太陽熱をよく吸収するようになり、融解が加速した。生じた変化がさらに悪影響を及ぼす負のフィードバック効果だ。そうして山岳地帯や極地の氷床は急激に縮小しつつある。
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