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「部分最適」への解毒剤、『イノベーション 悪意なき嘘』

ネットは使っているけど、なんとなく不安な人に効きます

2007年6月20日(水)

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『イノベーション 悪意なき嘘』名和小太郎著、岩波書店、1100円(税抜き)

イノベーション 悪意なき嘘』 名和小太郎著、岩波書店、1100円(税抜き)

 「革新」はよいことだ。新しい優れた技術やビジネスモデルが出現するたび、それは何らかの「問題」を解決し、回り回って社会全体の利益になる。これまでなかったものを生み出すことは素晴らしい。確かにそのとおりだろう。

 コンピュータについて考えてみよう。かつてはクレーンで窓から運び込まなければならなかった巨大な装置も、いまでは膝の上にちょこんと座るほど小さくなった。ミサイルの弾道計算やダムの構造計算などに用いられていたコンピュータの100万倍以上優れた性能を持つパソコンが世にあふれ、日夜ブログ執筆やネットショッピングに使われている。これは考えてみればすごいことだ。

 技術者たちや起業家たちはそのような「よいこと」を実現するために、革新=イノベーションを生み出し続けてきた。その結果、社会は素晴らしく住みよくなって、人びとの悩みはすっかり消えてなくなった…。あれ、待てよ、ちょっと違うかも。

 最新のコンピュータは音楽や映像を手軽に編集できるし、それを世界中に公開することもできるし、文書作成やプレゼンなども楽々だ。でもその反面、バージョンアップや周辺機器の更新コストはかかるし、ウイルス感染の警戒は怠れないし、うまく動かなくなってソフトウェアを再インストールするといった手間も増えた。「コンピュータにやらせたいこと」よりも「コンピュータのご機嫌を取ること」にエネルギーを注いでいるような気もする。

革新は、本当に問題を解決しているのか?

 技術革新は、ひとつの問題を解消しては別の問題を生み出しているだけなのかもしれない。もちろん、新しい問題は、また新しい「革新」によって解消されるのだろう。するとすぐさま次の問題が発生し、そのための「革新」が要請され、というキリのない話にもなる。

 前置きが長くなったが、本書はこうした(マッチポンプ的な)イノベーションのメカニズムをラディカルに論考する一冊だ。長く技術革新の現場にいた元エンジニアが、エレガントな筆致で「悪意なき嘘」をつつき回してみせる。100ページちょっとの薄さだが、内容は濃い。濃くて深いのだけれども、随所にあふれるユーモアがページをめくる手を止めさせない。

 1931年生まれの著者は特異な書き手である。第1次産業(石油探査)から第2次産業(ロケット生産)、第3次産業(データ処理)と産業各分野をエンジニアとして渡り歩いたのち、情報法の大学教員となり、今は多産の著述家、という人である。

 ご自身は「周辺ばかりを歩いてきたために何の専門家にもなれなかった」と謙遜するが、いわば著者は「異なる分野の論理を架橋すること」の専門家である。戦後日本の「モノ作り」の現場を十二分に知り尽くしながら、決して現場主義的に「ワシの若い頃は…」などと嘆き節をつぶやくことはない。そのかわりに、技術と革新とビジネスの関係を、文明論的な本質からえぐり出してくれるのだ

 著者によると、エンジニアの本業である「モノ作り」の性質は大きく変化している。従来の技術は、ハードウェア(有体物)中心にその革新を競ってきた。だが、こんにちではその舞台はソフトウェア(無体物)に移ってしまった。しかし、両者はいずれも「人工物」として生産され、市場で売り買いされることには変わりない。このことからさまざまなやっかいが生じる。

 例えば、工業生産において重要になる品質管理と保守のあり方だ。

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