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今日より明日、明日より明後日の方がいい演奏ができるよう、精いっぱい努力する

そして、仕事から離れて自分自身を取り戻す時間が必要です

  • 伊熊 よし子

バックナンバー

2007年6月14日(木)

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 宗教作品や合唱曲を演奏したら右に出る人なしと称されるスイス出身の指揮者、ミシェル・コルボ氏が、5月に東京国際フォーラムで開催された「ラ・フォル・ジュルネ・オ(熱狂の日)・ジャポン音楽祭2007」に出演するために来日した。2日から6日まで開催された音楽祭では、連日フォーレの『レクイエム』を指揮、清涼で敬虔で魂が浄化するような美しい演奏をたっぷりと披露した。

フォーレの『レクイエム』は宗教や人種、国境を超えた音楽

フォーレの『レクイエム』の指揮で第一人者のミシェル・コルボ氏。普段は穏やかでにこやかな紳士だ

フォーレの『レクイエム』の指揮で第一人者のミシェル・コルボ氏。普段は穏やかでにこやかな紳士だ(撮影:小川玲子、以下同)

 「フォーレは幼い頃から宗教学校で学び、やがて教会のオルガニストを務めました。ですから、この作品も多分にカトリック教会とのつながりが深く、みなさん教会音楽としてとらえていらっしゃるでしょうが、私はすべての宗教や人種、国境などを超えたユニバーサルな音楽として考えています」

 そう語るコルボ氏も、若い頃から教会でオルガンを弾き、教会の音楽監督を務め、フォーレと同様、宗教的な環境の中で音楽する心を培ってきた。そしてこの『レクイエム』にはとりわけ深い愛情を感じているという。

 「私がユニバーサルな音楽だと思うのは、どんな人が聴いても感動が得られるからです。これまで宗教や言語、文化、歴史などが異なる数多くの土地でこの作品を指揮してきましたが、年齢、性別などあらゆるものを超えて、みなさんが感激して涙を流し、口々に作品への賛辞を述べる。その気持ちはまったく変わることなく、多くの人が心を癒やされると言い、聴き終わった後は非常にいい表情をしています。これが素晴らしい音楽が人間にもたらす最大の効果ではないでしょうか」

少しでも偉大な作曲家の魂に近づきたい

 コルボ氏が東京で指揮した『レクイエム』は、毎日同じ歌手、オーケストラ、合唱団にもかかわらず、演奏は微妙に異なっていた。

 「これも音楽の持つ不思議な魅力の1つでしょうね。私は毎回決して同じ演奏はしません。たとえ演奏家がすべて同じでも、ホールが同じでも、聴衆が違いますから。今日よりは明日、明日よりは明後日の方がいい演奏ができるよう、精いっぱい努力しているつもりです。時折、疲れているからとか、眠いとか、飽きたからといって、マンネリな演奏をする音楽家に出会うことがありますが、そういう人には容赦しませんよ。リハーサル後にその人と1対1で話をし、とことん原因を追究していきます。なぜあなたは音楽を職業として選んだのか、なぜこんなにも素晴らしい作品を演奏することができるのに怠惰な態度を取るのか、なぜもっと自分を高めようと努力しないのか、なぜ安易な方に流れるのか、じっくりと話し合います。もちろん最初は静かに諭すように話しますが、それでも音楽に対する態度が真摯でない場合は、机を叩いて抗議します」

 普段のコルボ氏は、穏やかでにこやかで物静かな紳士である。その演奏と同様、相手をゆったりとリラックスさせる雰囲気に満ちている。しかし、この話題になった途端、にわかに表情が険しくなり、げんこつで何度も机を強く叩き、その場に居合わせた全員を震え上がらせた。

 「私は作曲家と作品に大いなる尊敬の気持ちを抱いています。その内奥に迫り、作曲家が意図したことを忠実に再現し、少しでも偉大な作曲家の魂に近づきたいと願っています。そのためにはオーケストラや合唱団や歌手にいい演奏をしてもらわなければなりません。指揮者は音を出せませんからね。私も昔は歌う側だったんです。でも、15歳の頃から、人に歌わせる方に強く興味を抱くようになった。自分が演奏せずに人に演奏してもらう。この難題に真正面から取り組もうと思ったんです。ええ、もちろん最初は大変でしたよ。でも、自分が楽譜から読み取ったものを演奏者にいかに伝え、理解してもらい、それを構築して1つの音の絵巻物に仕上げていくか、この作業に魅せられていったのです。リハーサルでは、もちろん言葉で自分の考えを伝えることも多いのですが、大抵はタクトを振りながら演奏で示します。これは本当に難しいことですけどね。指揮者は歌っちゃいかんのですから(笑)」

音楽は、エネルギー、すなわち生きる力を与えてくれる

 熱弁はとどまるところを知らない。静けさと気品と優雅さがあふれる口調だが、その根底には、音楽に対する熱い気持ちが横たわっている。表情も喜怒哀楽の感情がそのまま表れ、役者のようだ。話が進むにつれ、早口になり、熱を帯び、手の動きも激しくなる。

 「音楽はエネルギーを与えてくれるものです。そのエネルギーは単なる力ではなく、生きる力となります。演奏者は作品からエネルギーを与えられ、聴衆は演奏からそのエネルギーを受け取る。私はそれを生み出したいために、日々楽譜と対峙しているのです。これまで数多くの作品を演奏してきましたが、いずれも本当に納得のいく形にならないと、ステージでは演奏しませんし、ましてレコーディングもしません。レコーディングでも、何度か同じことを繰り返していると、嫌になる人が出てきます。これもまた大変です。そういう人にはじっくりと向き合い、本人が自分の仕事に誇りを持ち、音楽に敬意を表し、自分自身で結論を出せるまで待ちます」

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官