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第4回 墨を磨る繊細さを楽しむ

良質な硯を知ってしまった「幸福」と「不幸」

  • 奥本 大三郎

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2007年7月3日(火)

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色紙の大抵はマジックインクか筆ペンの書

 たまに講演などに行くと、私のような者でも話の後で色紙を書いてくれと頼まれることがある。貰(もら)ってくれてその後どうしてくれるのか、私の手を離れた色紙の運命が気になるところであるけれど、相手はもちろん重大に考えているわけではなく、要するに習慣なのであろう。

天成硯 端渓石 清代 縦8cm、横6.5cm、厚さ2.3cm

天成硯 端渓石 清代 縦8cm、横6.5cm、厚さ2.3cm

 「ハイ、ハイ」と言っていると、安物の色紙とマジックインクか筆ペンが出てくる。

 そう言えば居酒屋やラーメン屋の壁に黄ばんだ色紙が掛かっているのをよく見かける。芸能人やスポーツ選手のサインで、悪達者(わるだっしゃ)に人生訓や箴言(しんげん)など書き添えてあったりするけれど、それが大抵マジックか筆ペンの書である。

 ある学校での講演の時、
 「筆と硯はありませんか」
 と訊(き)いてみた。学校なら書道の時間があるから道具もあるはず。

 教頭先生は、「さあ……」と言ってから、汚れた硯と、これまた洗っていなくてカチカチになった筆が出てきた。

 「水を…」と言う暇もなく、その硯にとくとくと墨汁が注がれ用意が整った。仕方がない、墨汁に筆を漬けて、少しほぐれてから、我ながら変な字を書いた。

墨が磨れなくなった硯を生き返らせる

 硯は墨を磨る用具であって、墨汁を溜める器ではない、などとわざわざ言わなければならない時代になったのである。今は小、中学校でも墨汁、つまりあの石油製品の液体を使用させるらしい。そのうちに硯を見せられても、何に使うものなのか皆が首を捻(ひね)るという時代が来るかもしれない。

 私も小学校の頃、黒い、瓦のような硯で一生懸命、机をがたがたいわせて墨を磨った。しかしいくら磨っても墨は濃くならず、しまいには墨が磨れることを期待しているのか、それともこの黒い硯の表面が水に溶けて黒い汁になるよう力を込めているのか、何が何だかよく解らない気がした。

コメント1件コメント/レビュー

学生時代より書を嗜む者です。最近は、プロの書家でも墨汁を使う人がありますが、芸術作品としてみると物足らないものを感じます。ですので、私自身、どんな大作でも墨をするようにしています。このように、墨や硯にこだわりを持つ人が自分以外にもいるというのは、大変うれしく思います。これからも期待しています。(2007/07/03)

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学生時代より書を嗜む者です。最近は、プロの書家でも墨汁を使う人がありますが、芸術作品としてみると物足らないものを感じます。ですので、私自身、どんな大作でも墨をするようにしています。このように、墨や硯にこだわりを持つ人が自分以外にもいるというのは、大変うれしく思います。これからも期待しています。(2007/07/03)

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三品 和広 神戸大学教授